ヤンマーのコーポレートロゴ。撮影:樋口隆充
農業機器メーカー大手のヤンマーホールディングスが制作したオリジナルロボットアニメ『未ル わたしのみらい』の放送が4月2日深夜(日付では3日午前2時30分)から毎日放送(MBS)や東京MX系列で順次始まる。
産業機器を手がけるヤンマーの現役社員がデザインしたロボットが活躍し、世界を救うという内容で、作品へのファンを生み出すことで企業ブランディングにつなげる狙いがある。
制作の背景には社名に対する若者認知度の低下など、老舗BtoB企業が抱える経営課題があったという。
トヨタ自動車で「レクサス」のデザインを手がけ、同作品のエグゼクティブプロデューサーを務めたヤンマーの長屋明浩CBO(最高ブランディング責任者)に制作の背景を聞いた。
ヤンマーが制作したアニメ『未ル わたしのみらい』出典:ヤンマー公式Webサイト「ヤーマン」「ヤンマー」混同する若者。背景にテレビCM撤退
「ヤンマー?あっ、美顔器を作っている会社ですよね?」──。
社名の認知度調査をしていた際、若年層の女性が放った言葉に長屋CBOは衝撃を受けた。その女性はヤンマーHDと、美顔器など美容健康機器を手がけるヤーマン(東京都江東区)を混同していたのだ。精密機器メーカーとして1978年に創業した同社も若年層を中心に多くの支持を集める有名企業ではあるが、ヤンマーとは事業内容が大きく異なる。
「ヤンマーのことを『知っている』と言うので話を聞いていると、どうも話がかみ合わない。(ヒアリング対象の人が)違う企業のことを話していると分かった時は、本当にショックだった」(長屋CBO)
「これではダメだ」。長屋CBOがブランド力強化を強く心に誓った瞬間だった。認知度低下が進めば、会社の次世代を担う優秀な人材の採用や、企業との協業に影響が出る可能性があるためだ。
長屋CBO曰く、特にヤンマーの認知度が低い層はいわゆるZ世代だという。そうした傾向は自社の認知度調査にも表れている。
同社が2024年2月に16〜69歳の日本在住男女5500人を対象に実施した調査では、30〜60代で9割の認知度を記録したのに対し、10〜20代では6割程度にとどまった。同社広報は「2022年〜2024年の過去3年での傾向は横ばいで、大きな変化は見られない」と回答した。
長屋CBOが認知度低下の一因として指摘するのが、地上波テレビCMからの撤退だ。長屋CBOは「ヤン坊マー坊が地上波から消えた影響は大きかったと思う。事業内容は知らなくても、ヤン坊マー坊のことだけは知っているという人がたくさんいた。存在の大きさを実感した」と語る。
ヤンマーは1912年創業の老舗企業。世界初の小型ディーゼルエンジンの商用化に成功した企業として知られる同社は、1959年6月1日から2014年3月31日まで地上波テレビCMとして「ヤン坊マー坊天気予報」を各地で放送していた。
「僕の名前はヤン坊、僕の名前はマー坊」というお馴染みのフレーズと独特のメロディーを覚えている読者も多いのではないだろうか。
ヤンマーが放送していた「ヤン坊マー坊天気予報」。出典:ヤンマー公式Webサイト
CMは、認知度向上と、主要顧客である第一次産業従事者(農業・漁業)への天候情報提供という社会貢献活動の一環で放送していた。ただ、視聴率の低下に加え、スマートフォンの普及でテレビを通じた天気予報の役割を終えたと判断し、終了した。天気予報の終了以降もCM放送は続けていたものの、2017年6月を最後にテレビCMから撤退している。
長屋CBOは「(ヤン坊マー坊の)天気予報のおかげで、社名の認知拡大につながったことは事実」としつつ、テレビCMの費用対効果の低さを指摘し、地上波からの撤退を決めた当時の状況をこう振り返る。
「テレビでCMや番組を放送するには本当にお金がかかる。具体的な金額は言えないが、ヤン坊マー坊はびっくりするような金額を使っていた。(われわれのBtoBビジネスは)プロフェッショナル相手にやってるわけだが、認知度だけのためには費用をかけすぎている。当時は『別のことにコストを割くべき』という経営判断だった」
ワークマンが語る「テレビCMゼロ」の宣伝戦略。企業にテレビ広告は本当に必要なのか | Business Insider Japan
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アニメ制作の一因に不祥事リスクの低さなど
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