25歳で亡くなった長寿猫・へちまちゃん。飼い主さんが「最後の姿まで私の自慢です」と言い切る理由に涙

 猫飼いにとって、愛猫との出会いの瞬間はかけがえのない思い出です。猫と飼い主の人生が交わり、共に生き、そしていつかは覚悟しなければならない別れを迎えることになります。

 今回はムック本『別冊SPA!猫が好きにもほどがある』の、特集「猫と生きる。」から、25歳で虹の橋を渡った長寿猫・へちまちゃんを看取った飼い主の如月紅庵さん(@eijikun_gekiosi)のエピソードを紹介します。

 ◆25歳で大往生した長寿猫・へちまちゃん

 2022年5月7日、1匹のご長寿にゃんこ・へちまちゃんが虹の橋を渡りました。元野良猫のへちまちゃんは飼い主さんのお兄さんに保護され、家族の一員に。

 23歳のころから足腰が弱り、突然転んだりするようになったものの、イタズラをしたり、遊んだりする姿を見て飼い主さんは、できることがまだたくさんあるのだと嬉しく思っていました。

 甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう「甲状腺機能亢進症」を発症してもなお、服薬しながら元気に生きてくれる愛猫を、飼い主さんは「いつでも今が一番かわいい」と、懸命にケア。

◆別れの日。咳き込むような症状が見られ……

 しかし、別れの日は着実に近づいていました。ある日、食欲はあるものの便が2日ほど出ず、咳き込むような症状が見られたのです。翌日も抱き上げるとむせるような呼吸をしたため、かかりつけ医へ。

「大丈夫?」と声をかけながら徒歩で病院に向かっているときには首輪に付けている鈴の音が鳴っていましたが、病院でキャリーケースを開けると、焦点を失った目で息絶えた愛猫の姿がありました。

 診察中だった獣医師はすぐに対応してくれ、蘇生処置の決断を飼い主さんに委ねました。もし助かっても、今まで通り元気でいられるのか。延命はエゴではないのか。そう考え一瞬、心は揺らぎましたが、口から自然に出たのは「蘇生処置してください」という願い。

 それを聞き、獣医師はすぐ心臓マッサージや人工呼吸などを実施。しかし、小さな命は戻ってきてくれませんでした。

◆「最期の姿まで、私の自慢です」

 飼い主さんは泣きじゃくりながら、後悔の言葉を口にしましたが、獣医師は「頑張ったじゃない! こんなに長生きしてさぁ。大往生だよ!」と肩をさすって涙し、励ましてくれたそう。愛猫のニャン生を褒めてくれた獣医師の言葉に飼い主さんは救われました。

「小さな体で25年も頑張って生き、私が家にいるときを選んで苦しまずに逝ってくれた。壮絶な介護を覚悟していたのに最後まで自分の足で歩き、旅立つ前の腹ごしらえまでして……。最期の姿まで、私の自慢です」

 へーちゃん、ずっと一緒にいてね。でも、へーちゃんが虹の橋を渡るときには苦しくないように、眠るようにスーっとだよ。いい子だからできるよね? 亡くなる何年も前から語りかけていたその言葉を、へちまちゃんは受け入れ、旅立ってくれたのです。

◆へちまちゃん亡き後のペットロスとの向き合い方

 しかし、その後、飼い主さんはペットロスに苦しめられることに。買い物中、ごく自然に猫用品を買おうとしては「もういないんだ」と気づき、涙することもありました。

「ペットロスって何も手につかず、セルフネグレクト状態になるのだと思っていましたが、そうではなくて日常のふとした瞬間に空虚感が襲ってくるんです」

 また、これまではへちまちゃんのために自宅の片づけをしていたので、部屋は大荒れに。SNSのフォロワーから「へちまちゃんが戻ってきたとき、部屋があまりにも変わっていたらびっくりしちゃうよ」と諭されたことで汚部屋は改善されたものの、愛猫を亡くすことの重みを改めて痛感しました。

「小さな部屋が、果てしなく広い寂しい空間のように思えてしまう。今も乗り越えられてはいないけれど、泣きたいときは泣くでいいと思っています」

 月日が経つにつれ、少しずつ前を向けるようになってきた飼い主さん。今は、あの世で再会できたときに恥ずかしくない人生を送ろうと奮闘している最中です。どんな別れ方をしてもついて回る後悔に浸るのではなく、最上級にかわいい愛猫と長い時間、共に生きられた幸せを噛みしめようと、考え方を変えました。

「へちまに、おはよう、おやすみ、ただいま、行ってきますと言うのは今も日課です」

 いろんな景色を、へちまにも見せてあげたい。そう話す飼い主さんの腕には、お骨が入ったブレスレットが。2人は今でも、一緒に笑い合う家族です。

<取材・文/古川諭香>

【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291

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