画像:松本人志 公式Xより

 昨年末から『週刊文春』(文藝春秋)で報じられていた性加害問題を受け、2024年1月から芸能活動を休止したダウンタウン・松本人志。お笑い界を引っ張ってきたカリスマが1年近くメディアから姿を消したことは2024年の重大トピックの1つと言える。

 そんな松本は発行元の文藝春秋などに約5億5000万円の損害賠償と訂正記事を求める訴えを起こしていたが、11月8日、松本側が訴えを取り下げることで文春側と合意したことを明らかにした。このことを受けて事態は収束に向かい、近々メディア復帰を果たすと考えた人は結構いる。

 とはいえ、依然として「そもそも性行為はあったのか」「仮に性行為があった場合、強要だったのか、それとも同意だったのか」といった重要ポイントは曖昧なまま。まだまだ不明確なことは多い状況と言える。だからこそ、松本復帰を歓迎する声を自身のXに投稿した“同業者たち”には違和感を覚えて仕方ない。

◆娘がいる“父親”なのになぜ擁護できるのか

 松本が訴えを取り下げる報道が出た後、さまぁ〜ず・三村マサカズは「松本人志復活!ですなぁ。いいねーーーー!」と投稿。くまだまさしも「松本人志芸能活動再開 ただただ嬉しい」と祝福した。プレスリリースには活動を再開するとは一切書かれておらず、上述の通り詳細もまだ不明な状況。こういった声を上げる段階ではなく、2人の投稿には批判が殺到。くまだは当該投稿をすぐに削除した。

 ちなみに、三村とくまだには娘がいる。娘を持つ父親であれば、松本の性加害報道の真相が明らかにされていない段階で、松本の肩を持つことはできないのではないか。くまだにいたっては当該投稿をした前日に「17歳の娘に、初めてカレーライスを作ってあげました」と投稿をしており、なおさら松本を擁護したことには困惑する。この2人が松本復帰を歓迎する投稿を見せたことに、いかに芸能界は性加害に対する認識が世間とズレているのかを感じずにはいられない。

 芸人とは本来、世相や空気を敏感にキャッチしながら、それを笑いに昇華させることが生業の職業のはずだ。にもかかわらず、その逆をいく一部の芸人たちの行動は理解しがたい。

◆身内に甘すぎるお笑い界の構造が明らかに

 そもそも、お笑い界のレジェンドのスキャンダルとはいえ、この件に芸人がノータッチすぎることも不可思議である。松本の件を話題にする芸人はほぼほぼいない。

 もちろん、被害に遭った可能性のある女性のことを思ってそうしている芸人もいるのだろう。しかし実際のところ、松本、ひいては吉本興業に睨まれることを恐れ、ネタにしない芸人がほとんどなのではないか。また、三村やくまだのように、どこか盲目的に松本を支持する芸人も多い。こちらも同業者とギクシャクしたくないため、“お利口さん”でいるのだろう。

 芸能界、とりわけお笑い界がいかに身内にめっぽう甘い構造になっているのかも、今回の松本の性加害をめぐる報道で明らかになったように思う。

◆『虎に翼』主演女優の“兄”にガッカリ

 松本の復帰を歓迎した芸人は三村やくまだ以外に、オズワルド・伊藤俊介もいる。伊藤はXで松本のコメントをリポストし「松本さん!!ダウンタウンが戻ってくる!!やっと!!嬉しすぎ!!」と興奮気味の様子。伊藤は妹に女優・伊藤沙莉がいる。伊藤沙莉といえば今年話題を集めた朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)の主演を務めていた。

 『虎に翼』は男性主導社会に立ち向かう女性の姿を描いたドラマとなっており、性被害に遭って心に深い傷を負った女性たちも登場する。そのため、妹が『虎に翼』で主人公を演じていたにもかかわらず、性加害の疑いのある松本を歓迎する伊藤の投稿に、沙莉や『虎に翼』の名前を出して批判する声も寄せられていた。同作にどハマりしていると公言もしていたオズワルド・伊藤だが、言ってしまえば『虎に翼』とは関係ない。ただ、『虎に翼』の内容が良かっただけに、彼の投稿にやきもきしてしまった人が少なくなかったのだろう。

 今回、松本の肩を持った芸人たちが、これからも一貫して松本待望論を唱え続るのか気になるところ。その一方で、松本の報道に批判的なコメントを寄せる芸人が出てくるのか注目したい。

<文/浅村サルディ>

【浅村サルディ】
芸能ネタ、炎上ネタが主食。好きなホルモンはマキシマム ザ ホルモン。

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