ルーキーにして堂々たる投げっぷりで2桁勝利を収め、見事“新人王”に輝いた武内夏暉選手が登場。茶目っ気のある笑顔の奥に揺るぎない精神とブレない芯を持つ彼が、プロ野球の世界に飛び込み何を思い、感じているのかに迫ります。
武内夏暉(埼玉西武ライオンズ)
その年の最も優秀な新人選手に与えられる最優秀新人賞、通称“新人王”。’24年度のパ・リーグにおいて、規定投球回到達および2桁勝利と文句なしの成績を挙げ、その新人王に輝いたのが埼玉西武ライオンズのピッチャー、武内夏暉だ。大学時代から注目を集め、’23年のドラフト会議では3球団から1位指名を受けた23歳左腕。周囲の期待を一身に背負いつつもプレッシャーに屈することなく、マウンドでベテランのような落ち着きを見せていた彼は、撮影でも堂々たるたたずまいで、シューティングを楽しんでさえいた。
――この一年を振り返って、良かった部分と今季への課題となった部分をお聞かせください。
良かったのは変化球。思ったより磨けた感じがします。シーズン中、特に何かを変えたというわけじゃないんですけど、試合で投げるたびに感覚が良くなっていって。投げていくうちに自信がついていきました。課題は、体力的な面ですね。前半は球速的にも良かったんですけど、やっぱり後半になってくると落ちてきて。ストレートで勝負できなくなってきていたので、一年通して戦える体力をつけないと、と思っています。
――メンタル面はいかがでしたか? 例えば、なかなか援護点がもらえないときなど、どう気持ちを作られるのでしょうか。
自分は結構、投手戦が好きなんですよ。早く次に次に投げたいので、投手戦に持ち込んだ方が投げやすくて。だから、(味方のスコアボードが)0、0でも全然問題ないんです(笑)。
――すごいですね! もともと感情の波は激しくないタイプ?
はい。時にはワッとなることもありますけど…1点差で勝っていてピンチを抑えたときとか。
――でも、派手なガッツポーズなどはあまりされないですよね。
確かに、そういうタイプではないですね(笑)。
――9月にはノーヒットノーラン目前で打たれてしまった局面も。ああいうときはどう切り替えられるんですか?
いや、切り替えるというよりも、いつか打たれるんじゃないかなという気持ちはずっとあったので、「あぁ打たれたか」ぐらいな感じでした(笑)。
――本当に肝が据わっているというか、常にフラットでいらっしゃるんですね。試合前のルーティンなどはありますか?
自分は、試合前は緊張したいタイプで。緊張した方が力が出やすいので、前日の夜から緊張して寝ていますね。明日のことを考えて、どんなバッターかとか想像したりして…。そうしたら気持ちが入ってくるんです。
一年間戦える体を意識しながら。
――ボディメイクについてもお聞かせください。ご自身の体の中でここが自慢という部分は?
お尻はみんなに褒められます。もともとはめちゃめちゃ細かったんですけど。
――1年前と比べると、全体的にもガッシリされて。
やっぱり、大学を卒業したときの体では一年間戦えないなと思ったので。でも、急激に変えるのもケガしがちになってよくないので、気をつけながらトレーニングしていました。走り方一つにしても、新人合同自主トレからケガをしないフォームというものを教えられたりして。そのおかげでケガもせず自然と体が大きくなりましたし、体力も一年もったなと思います。
――現在は186cmですけど、身長はまだ伸びていらっしゃいますか?
いや、もう止まりました。今ぐらいでちょうどいいです(笑)。
――最近は長身のピッチャーも増えていますよね。
多いですね。左の長身は大成しないというジンクスがあるらしくて。去年の春キャンプのとき、ピッチングコーチとそのジンクスを覆そうと話してました。
――見事に覆されましたね。普段はどのように体作りをされているのでしょうか?
大体1週間でルーティンが決まっていますね。試合があって、次の日はジョグして、治療を受けて。その次の日は休んで、また翌日からウェイトトレーニングを始めます。鍛えるところは大体決まっていて、同時にやるときもありますけど、最初は下半身をやって、次に上半身をやって。で、試合前日にはバランストレーニングをします。
――食事の方も日によって変わるんですか?
去年は食事の調整があまりうまくいかなかったので、今年はもうちょっとそこを改善したいですね。一人暮らしになって調理師さんに付いてもらったので、話を聞きながらやっていて。結構体脂肪も落ちてきています。
自然に触れることで疲れが癒えた。
――武内選手の素の部分も気になります。アスリートとしてのご自身と普段のご自身にギャップなどはありますか?
野球しているときと普段の違いですか…。変わらないなぁ。周りからはよく「見たまんま」と言われます。
――お話をうかがっていると、常にニュートラルで淡々としていらっしゃるというか。あまり怒ったりもしないですか?
ちょっとイラッとするぐらいのことはあっても、怒ったりはしないです。人と喧嘩するようなこともないですし。どちらかといえば穏やかなタイプだと思います。
――チームメイトで特に仲がいいのは?
羽田(慎之介)は、年下ですけど仲いいです。寮だとごはん食べるときとかお風呂も結構みんなと一緒なんですよ。特に羽田は向かいの部屋だったということもあって仲良くなりました。今は、自分はもう寮は出てしまいましたが、羽田とはたまに一緒に出かけたりもしていますね。
――シーズン中は緊張感も絶えないと思いますが、プライベートでの究極のリラックス方法というと何でしょうか。
自然の多いところに行って、景色を眺めたりすること。遠出して、海が見えるスパに行ったりもしました。サウナに入って外気浴をしたんですけど、気持ちよかったです。もともとすごく自然が好きというわけではなかったんですけど、プロの世界に入って、気持ち的にちょっと疲れるときがあって。それで、思い切って行ってみたら思いのほかよかったですね。
――では最後に改めて。監督も変わり新体制で迎える今シーズン、どう臨みたいですか?
昨シーズンと同じようにやっても対策されるので、自分も進化していかないとと思っています。昨シーズンで課題となった体力だったり、高められるところを高めて、昨年以上の成績を出すことを目標に、もう1段上のレベルでやっていきたいですね。プロ野球というのはファンあってのものなので、皆さんに喜んでもらうにはやっぱり勝つことが一番だと思いますし、そこに貢献できるようにまた頑張っていきたいです。
PROFILE武内夏暉
たけうち・なつき 2001年7月21日生まれ、福岡県出身。埼玉西武ライオンズ所属、投手。左投げ左打ち。東都大学野球リーグで活躍し、“東都7人衆”の一人として注目を集める。’23年のドラフト会議で1位指名を受け、ライオンズに入団。ルーキーイヤーとなる’24年は21試合に登板。球団の新人として’07年以来、17年ぶりとなる規定投球回到達および2桁勝利を達成し、’24シーズンの新人王を獲得。
ネックレス¥29,700 ブレスレット¥64,900(共にアダワット トゥアレグ TEL:050・5218・3859) その他はスタイリスト私物
写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・ダヨシ ヘア&メイク・坂西 透 取材、文・野村 文
anan 2432号(2025年1月29日発売)より