帰るべき場所とは?

【漫画】本編を読む

コロナ禍に一般企業を退職したことを機に、「ヤングジャンプ」の「1億円40漫画賞」に応募し、その作品が見事入賞したという矢嶋こずみ(@kosmy8588)さん。現在は版面漫画やWebtoonの背景作画・仕上げを担当する仕事をしながら創作活動を続けている。

そんな矢嶋さんの作品「帰り途(みち)」がネット上で「切ないけど凄くいい話ですね!」「読み返してすべて理解し泣きました。素敵…」「これは悲しいですね…でも勇気を出すことの大事さを学べる良いお話でした」と評判だ。作者の矢嶋さんにこの作品に込めた思いなどについて聞いてみた。

■ 白骨死体を探す少女たち…思春期の葛藤と成長を描く物語

帰り途(みち)_P1

帰り途(みち)_P2

帰り途(みち)_P3

ジュブナイル的な作品が好きだという矢嶋さんは、「世に出回っているものの多くは『少年たち』や『少年少女』という組み合わせが多かったので、少女2人で構成し、なおかつ耽美な空気になりすぎない、地に足が着いたような作品に仕上げたいと思いました。要約すると作中でも出てきた『スタンドバイミー』の女の子版ですね」と振り返った。

舞台の具体的なモデルはないが、イメージは「東海道沿いの田舎町」。都会に出やすいけど落ち着いた雰囲気があり、少し閉塞感もある場所として、静岡あたりを思い浮かべながら描いたという。物語の中には、「死体」を探すという行動の裏に「自分に足りなかったもの」を探すというテーマが隠されているように思える本作。タイトル「帰り途(みち)」には、「2人の少女たちが自分の帰るべき場所を見つける途中」という意味が込められている。

「避けようの無い不幸に見舞われた2人にとって、『世界』とは残酷で逃げ場所も無く、生き延びるためには勇気や成長(足りなかったもの)が必要でした。その上で、何があっても安心して飛び込めるような居場所を見つけることがこの物語の終着点だと考えました」と語る矢嶋さん。1人はかつての自分の居場所を取り戻し、もう1人は自分にとって本当の「帰る場所」を見つけることを目指して旅をする。

傷ついたり迷ったりしながらも、少しずつ前に進んでいく姿が描かれている本作。矢嶋さんらしいリアルな感情の変化が、コメディからシリアスまで幅広く表現されており、大人になった今でも心に響く作品だ。ぜひ一度読んで、彼女たちの成長を感じてみてほしい。

取材協力:矢嶋こずみ(@kosmy8588)

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