無罪を訴えながら獄中死した兄・奥西勝。その意思を引き継いだ妹・美代子は94歳。彼女がいなくなる時「事件」は闇の彼方へと消える…。

東海テレビ製作のドキュメンタリー『いもうとの時間』がポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて2025年1月4日(土)より公開されることとなり、その予告編が到着した。

1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88歳)の事件で、静岡地裁の再審判決は、捜査機関による証拠捏造(ねつぞう)を認めた。到着した本作『いもうとの時間』の予告編は、裁判で無罪を勝ち取った袴田巌さんの姉・ひで子さんが、「無罪になったよ」と袴田さんに呼びかけるも、表情を変えない袴田さんの姿が映し出されるシーンから始まる。

その一方、いまだに再審の扉が開かれないのが1961年に起こった「名張毒ぶどう酒事件」だ。1961年、三重と奈良にまたがる集落・葛尾で凄惨な事件が起こった。村の懇親会で振舞われたぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡。これが、世にいう名張毒ぶどう酒事件である。犯人と目されたのは、奥西勝(当時35歳)。客観的証拠はなく、あるのは自白調書のみ。一審判決では無罪を勝ち取ったが、二審では一転して死刑判決が言い渡される。以降、無実を訴え続けるも、奥西は89歳で獄中死した。

被告が亡くなった名張事件で再審請求を引き継いだのは妹の岡美代子。弁護団を結成し、新証拠を出し続けるが、再審の扉は開かれない。遂に10度目の再審請求も幕を閉じ、棄却され続けた月日はなんと半世紀。再審請求は配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹しかできない。美代子は現在94歳。美代子がいなくなれば、事件は闇の彼方に消える。残された時間はそう長くはない。それでも兄の無罪を信じ、長生きを誓う。あまりにも長く辛い「いもうとの時間」は果たしていつまで続くのか?

予告編は冒頭の袴田巌さんが無罪を勝ち取ったシーンに続き、妹の美代子が兄の墓前に座り祈りを捧げるシーンへと続く。ナレーションを務めるのは、『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(12年)で奥西勝を演じた俳優の仲代達矢だ。

東海テレビは名張事件を取材し続けて46年、名張事件ドキュメンタリーはこれで8作目となる(映画化は4度目)。名物プロデューサー阿武野勝彦が東海テレビを退職する最後の題材に選んだのが名張事件だった。『人生フルーツ』『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』を生んだ東海テレビドキュメンタリー劇場の第16弾。取材を引き継いできたディレクターたちの思いを結集させ、裁判の非道ぶりを叫ぶ。2024年2月に東海テレビローカルで放送された番組を追加取材・再編集した劇場版がいよいよ2025年1月4日(土)より公開となる。

ジャーナリストの江川紹子は、本作に以下のコメントを寄せている。

人の命は無限ではない。残された時間は、どれほどだろうか。
司法は、まるで“その時”が来るのを待っているかのようだ。
-江川紹子(ジャーナリスト)

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