原作は『攻殻機動隊』の士郎政宗。

【ストーリー】
大戦が終わり、国家はことごとく灰燼に帰した。
銃器による犯罪の横行する世界を、女性兵士のデュナンは仲間とともに、戦いながら生きのびていた。
たがデュナンの部隊が、高度にロボット化した戦闘兵器部隊に襲われ、全滅してしまう。
奮戦するデュナンだが、追いつめられ敵に包囲される。
そこに新たな戦闘団が参戦し、窮地からデュナンを救う。
身長2メートルを超えた全身サイボーグの男性。
それはかつての恋人、様変わりしたブリアレオスだった。

さて、いきなりですが原作の話をします。
『アップルシード』は青心社から発売された、士郎政宗の大型本。
全四巻+データブックやら副読本、美術本やらたくさんの作品が発表されてます。
中学二年生で友だちにすすめられて、はじめて読んだときは衝撃でした。
「この未来、来る」
本気で信じちゃいました。
それだけ説得力に満ちた世界観なんですね、士郎政宗作品。
反面ドラマは弱く、骨太のハードSF世界で、主人公たちは戦闘のプロらしい、おさえた感情表現になってます。

原作では崩壊したビル街で、楽しくサバイバルしていたデュナンとブリアレオスを、立法院のヒトミと、行政院トップのアテナ子飼いの戦車部隊が、二人に迫るところからはじまります。
はねっかえりの若いデュナンと、それをたしなめ慎重に判断をくだすブリアレオス。
SWAT隊長の父親に鍛えられた娘と、負傷で全身サイボーグになった父親の有能な部下という関係でもあります。
二人は最初からカップルで、その関係はゆらぎません。
士郎政宗作品って、ロマンスは添えものなんですよ。
無くても困らないレベルにしか描かれてません。
『攻殻機動隊』でも、原作では素子とバトー、ミジンコもラブくないし。
素子ったら一課の課長と週末すごしたり、副業での販売用アダルトデータの制作で、友だちとレズプレイしたりして、アニメのクールさはありません。
バトーも、若い女性のフリした七十代男性とネットでデートしてるし。あ、バトーは騙されてますよ。しかも荒牧に監視されてて笑えます。
作風、基本コメディなんですよね士郎政宗。

なにがリアルなのかというと、見たこともない未来デバイスを、キャラクターたちがあたりまえに使いこなすところ。
すごい自然なんですよ。
アップルシードなんか説明もせずに超小型ドローンとか使ってるし、車のバックミラーはカメラだし、顔認証で尾行者を特定して補足してるし。
攻殻機動隊でも、スマホなんかなくても頭の中でブラウジングしてるし、通話しながら視覚データをクラウドにアップして分析してるし。
どうです?
「この未来、来る」って思いませんか?

原作原理主義者ではない自分ですが、設定改変の多いこのデジタルアニメのどこを気に入っているのかというと、オリュンポスという都市の構造物です。
「そうそう、タルタロスはその形!」
「多脚砲台(タカアシガニ)のキャノンはその位置!」
というような、メカや未来都市のディテールが原作に忠実なところ。
自分、原作に出会ったときからオリュンポスに住みたかったんですよね。
その欲求を満たしてくれる作品なんです。

うたい文句どおりに音楽はノリがいいしアクションはスタイリッシュなんですが、正直そこはどうでもいいや笑
内容は第一巻『プロメテウスの挑戦』、第二巻『プロメテウスの解放』までを、分解していっぱいなんか足して原型なく組み立てなおしてホイップクリーム盛ってイチゴのっけたモノになってます。
具体的には、プロデュースの曽利文彦と荒牧伸志監督らしい大仰なドラマが加えられてます。イヤなの?すごくイヤだよ!

ふう。
言ったった。
思ってたことぜんぶ言ったった。
このドヤぶりごらんあれ。

あと、補足としては、リアルな未来兵器のたくさん出てくる士郎政宗作品ですが、実は軍隊を主役にしたものはありません。
このアップルシードでは警察特殊部隊のSWAT、二作目『ドミニオン』は地方都市パトロール戦車隊、そしてご存じ攻殻機動隊は首相直属の公安局といった、法執行組織(警察とか)を、主人公の所属組織として描いてるんですよね。
なので映像化作品の軍隊エピソードや設定は、いずれもほぼオリジナルです。

あとなんか書きのこしたことあったっけなあ……そうだ、実は『D[di:]』の洞沢由美子キャラデザで、アップルシードのOVA(オリジナルアニメビデオ)が制作販売されてます。
版元はガイナックス。
出来はまあ、ねえ。
これに『実写版ショートフィルム』っておまけ映像がついてるんですが、デュナン役の女の子、りりしくてかわいいんですよ。
珍品ですが、3分程度の長さなので、機会あったらちょっと見てあげてほしいかな。
ブリアレオスのかぶり物がよくできてて、折れストローでジュース飲んでるシーンは妙に萌えます。

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