本部町営市場(資料写真)
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再整備の計画がある本部町渡久地の本部町営市場の今を取材した『2024年の本部町営市場』(HB BOOKS)が出版された。ライターの橋本倫史さんが市場内の店舗に聞き書きした内容と、写真家や市場の店主たちの寄稿を収録した。橋本さんは「本部町営市場でつづられた言葉を地続きの話として考えてほしい」と話す。
これまで、第一牧志公設市場を取材した『市場界隈(かいわい)』『そして市場は続く』、水納島を取材した『水納島再訪』などを出版してきた橋本さん。今回の本出版のきっかけは、昨年9月の市場取り壊しのニュースだ。市場機能を存続しない可能性があるとの知らせが急だったことに衝撃を受けた。「市場にいる人が何を思っているのか聞いて、世に問いたい」。
昨年10~12月、沖縄に通い、店を営む23人から聞き取りをした。1966年にできた町営市場。親世代から引き継いだ人、沖縄に移住して店を始めた人など、さまざまな人が働く。半数以上は開店20年の新しい店だ。橋本さんは「自分の力で生計を立てることができる場所は大事で、地域社会にとって必要だ」と指摘する。
店の記録に加え、各店主の市場の建て替えについての意見も盛り込んだ。市場の計画がまさに動いている状況にあるからだという。実際、橋本さんが取材中にも再整備の方針が発表され、今後もどうなるか分からない部分が多い。だからこそ「今の市場で働く人たちの意見を多面的に書いておこうと思った」。

市場の未来が決まる前にとスピード感を持って自費で制作、出版した。「市場がどういう点でかけがえないか、僕以外の視点が必要」と、編集者や市場で古本屋を営む店主、映画館を営むオーナーなど、幅広い人たちから、まちに関する寄稿を募って収録した。制作から約5カ月、357ページの大作が完成した。
本部町営市場に限らず、日本各地で昔からあった店や場所がなくなり、まちの風景が変わっていく。橋本さんは「『仕方がないことだ』とあきらめるのは辞めにしたい」と本書の中でつづる。「まちがどうなるか、どういうまちにしたいのか、そこに住む一人一人の行動が左右する部分はあるはず」と話した。本は県内の書店にて販売中。定価は1980円。

(田吹遥子)
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