メモ
デジタル書籍やタブレットを用いた学習は世界的に普及しており、北欧のスウェーデンは保育園でのタブレット導入をはじめとした、教育分野でのデジタル化が進む国のひとつです。しかし、このデジタル化が子どもたちの読解力低下を招いている可能性が指摘されており、印刷された紙の本と手書きでの学習に立ち戻る計画が進みつつあります。
Sweden brings more books and handwriting practice back to its tech-heavy schools | AP News
https://apnews.com/article/sweden-digital-education-backlash-reading-writing-1dd964c628f76361c43dbf3964f7dbf4
スウェーデンの学生の読解力はヨーロッパの平均を上回っていますが、小学4年生の読解力に関する国際的な評価である国際読解力調査(PIRLS)では、2016年から2021年の間に平均スコアが低下していることが明らかになっています。
2016年のPIRLSでは、スウェーデンの小学4年生の平均スコアは555点でしたが、2021年の平均スコアは544点と11点も低下しました。ただし、スウェーデンのPIRLSの平均スコアは2021年時点でも全世界で7番目に高いです。なお、2021年のPIRLSではシンガポールがトップに君臨しており、平均スコアは2016年の576点から、2021年には587点にアップしています。
スウェーデンのPIRLSの平均スコアが2016年から2021年にかけて低下した理由としては、「新型コロナウイルスのパンデミック」や「スウェーデン語を母国語としていない移民生徒の増加」などが挙げられています。しかし、一部では「教育分野でのデジタル化」が読解力低下の主要な原因になっているのではと指摘されています。
2023年8月、スウェーデンのロッタ・エドホルム教育大臣は、保育園でのデジタル機器の使用を義務付ける国立教育庁の決定を撤回するという声明を発表しており、「スウェーデンの学生にはもっと教科書が必要です。物理的な本は、学生の学習にとって重要です」と述べ、同国のデジタル推進が学生に悪影響を及ぼしていると語りました。他にも、国立教育庁が「6歳未満の児童のデジタル学習を完全に廃止することも計画しています」と、AP通信に語っています。
スウェーデンのカロリンスカ研究所も、「デジタルツールは生徒の学習を向上させるのではなく、むしろ妨げるという明確な科学的証拠があります」「正確さが検証されていない無料で入手できるデジタル情報源から知識を獲得するのではなく、印刷された教科書と教師の専門知識を通じて知識を獲得することに戻るべきだと私たちは考えています」と語りました。
ユネスコも「教育におけるテクノロジーの適切な使用に関する緊急要請」という報告書を発表しており、この中で「教育におけるテクノロジーは、教師主導の対面指導に取って代わるものではなく、すべての人に質の高い教育を提供するという共通の目標をサポートするような形で導入されるべき」と警告しています。
スウェーデンの首都ストックホルムにある小学校に通う9歳のリヴォン・パーマー君は、「学校では紙に書く方が好きだよ。その方が気分がいいからね」と語っています。パーマー君の教師であるカタリナ・ブラネリウス氏は、「私は算数の授業でタブレットを使い、アプリもいくつか使っていますが、文章を書く際にはタブレットを使いません」「10歳未満の生徒には、タブレットで書くことを教える前に、手書きの時間が必要です」と、デジタルとアナログを使い分けていることを明かしました。
スウェーデン政府は小学4年生の読解力低下を防ぐため、小学校に書籍購入用の予算として6億8500万クローナ(約100億円)を確保すると発表しています。
ただし、教育分野でのデジタル化を紙の本と手書きに戻す取り組みが、学生にとって最善のものであるとは限りません。オーストラリアのメルボルンにあるモナシュ大学のニール・セルウィン教授は、テクノロジーの影響を批判することは「保守派政治家の間では人気の手法だ」と指摘。さらに、「スウェーデン政府が、テクノロジーが学習を向上させるという証拠はないと言うのはもっともですが、それはテクノロジーが何に効果があるかという明確な証拠がないからです」とも語っています。
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