4月4日(金)深夜24時12分からスタートするドラマ24「ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~」。
芸能事務所のベテランマネージャー・吉川恵子(松下由樹)が新人俳優・森山拓人(野村康太)に異常なまでの愛を注ぎ、その執着が狂気へと変貌していく…鬼気迫る狂愛サスペンスだ。

【動画】恵子の愛はエスカレートし…「ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~」衝撃のティザー

「テレ東プラス」は、主人公・吉川恵子を演じる松下由樹を取材。作品の見どころはもちろん、マネージャーとの思い出から90年代のドラマ秘話まで、話を聞いた。

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その時々で、恵子に思いを巡らせながら演じています

――狂愛に満ちた恵子のさまざまな言動が話題になりそうな本作。先の読めない展開が続き、刺激的な物語になっています。

「セリフもパワーワードばかりで展開も早くて激しいし、この強烈な物語をどう演じたらいいのか…というのが、最初に脚本を読んだ時の印象でした」

――コメディーや刑事もの、シリアスからラブストーリーまで、これまで数多くのキャラクターを演じてきた松下さん。役作りで意識していることはありますか?

「ドラマの世界観にどれだけ入れるかを大切にしています。演じている途中で迷いたくないので、撮影に入る前は、スタッフの方と作品やキャラクターについて何度もお話しさせていただいています。今回も脚本だけではくみ取れない部分を話し合ってキャラクターに落とし込んでいる感じです。脚本を読んだ時に感じた“強烈”という印象を何周もさせてフラットにし、“ドラマの中の恵子がいかにリアリティーを持って見えるか”を意識しました」

――恵子のように突き抜けたキャラクターだと、難しさも?

「そうですね。ただありえないと思う行動も、“もしかして同じようなシチュエーションが起きたらありえるかも?”と想像してもらえるように、そういう努力はしています。
何より作品に没入してもらうことが大切、その上でキャラクターに共感してもらえたら。そのためにも、キャラクターの気持ちの裏付けなどはしっかり行っています」

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――“視聴者を怖がらせる”といった狙いもありますか?

「それはないですね。恵子は自分では怖いと思っていないので、私も恵子を怖いとは思っていません。拓人役の野村くんが、『“一緒に住まない?”と誘ってくる恵子が怖い』と言っていましたが、恵子としては心配だから言っているだけで、拓人を怖がらせようとは思っていない。その時々で、恵子に思いを巡らせながら演じています」


「想い出にかわるまで」は、みんなの気持ちがすり減っていくような…そういう感じがありました

――松下さんは15歳の時に映画でデビューしていますが、拓人のように新人だった頃、マネージャーさんはどのような存在でしたか?

「私にとっては特別な存在でした。高校の入学式にも付いてきてくれましたし、校長先生にもあいさつをしてくれました。学校行事にも関わってくれて…いろいろな面で支えてもらいました。素敵なお姉さんという存在で、頼りになるし憧れもありましたね。この業界に入って初めて出会った大人の女性でした」

――10代の頃は、音楽番組でダンサーとして活躍していたことも。あの頃から、俳優を目指していたのでしょうか。

「役者としてお芝居がしたくてこの業界に入りましたが、身長があったのでダンスを勧められたんですよね。習ってみたらものすごく楽しくて、ダンスはセリフがないお芝居のようで、それもまた一つの表現だったので面白かったです。

ただ、ダンサーとしてテレビ出演していた時も、“お芝居がしたい”という気持ちは強かった。21歳で『オイシーのが好き!』(TBS 1989年)で主演させていただいた時は、“ようやく…”と思いました。“やっとこれで、少しは自分の好きなことができる”と。
でも、自分の中ではそれでも遅かったんです。当時はもっと若い俳優が主役を演じる時代だったので、頑張らなきゃと思いました」

――80~90年代と令和では、撮影現場の雰囲気も違いますよね。

「現場も全然違いますし、今は作品の視聴環境も違いますよね。昔は世の中の人々が集中してテレビドラマを見ている時代で、見逃し配信もなければ録画もほとんどなくて、みんなオンタイムで放送を見ていました。見逃してしまうと翌日の話題についていけなくなるので、本当にみんな真剣でした(笑)。

そういう空気感は作り手側にもあって、本編はもちろん、予告編でもくぎ付けにしなければいけないという、鬼気迫るものがあったと思います。常に“来週が待ち遠しい”と思わせるような作り方をしていましたし、現場も息切れするくらい真剣でした。

それこそ『想い出にかわるまで』(TBS 1990年)は内容もシリアスなので、みんなの気持ちがどんどんすり減っていくような…そういう感じがありました。物語や役にのめり込んでいくというか。スタジオの空気もピーンと張り詰めていて、かなり緊張感がありました」

――「想い出にかわるまで」や「クリスマス・イヴ」(TBS 1990年)、「週末婚」(TBS 1999年)を始めとした脚本家・内館牧子さんの作品は、すさまじい影響力を持っていましたよね。これらの作品で松下さんが演じた役もかなりインパクトがありました。昔は演じた役の印象で見られることも多かったのでは? と想像します。

「そうなんです(笑)。『ナースのお仕事』(フジテレビ 1996~2014年)に出演するまで、嫌われ役を演じることが多かったので、いろいろ言われました。街を歩いていてすれ違いざまに、電車から降りた時に捨てゼリフのように嫌な言葉を投げかけられたこともあって…。同じ業界の方に役のイメージで見られてしまうこともありました。でもそれはきっと、皆さんそれくらいドラマに夢中になっていたという証なんだと思います。すごい影響力でした」

記事画像▲「ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~」第1話より

――長きにわたり俳優として活躍している松下さん。ここまで続けてこられた秘訣は、どこにあるのでしょう。

「“演じる”という意味では同じようなことを続けていますが、現場が変わると全部違うものになる…俳優とはそういう仕事だと思います。同じ俳優さんと共演しても、作品が変わればまた違った印象になります。常に変化がある仕事なので、ここまで続けてこられたのかもしれません。あと、いろいろな役をいただけたことも大きかったですね。ありがたいです」

――年齢を重ねていく上で、仕事に対する取り組み方に変化はありましたか?

「俳優という職業柄、年を重ねた分、お芝居に活用できるものが増えていくので、プラスになることが多いんですよね。若い頃よりも引き出しが増えて、今は大きなタンスになっている感じがします。あとは使い方次第。自分でアレンジして使うのも楽しいです。

気持ちの面では、若い時にはないゆとりが持てるようになりました。やみくもにダッシュするのではなく、先に何があるか分かるから、ダッシュしても加減できます。
あと一つ思うのは、先ほどお話したような昔のドラマの現場で育っているので、若い時にいろいろなことを思い切り体験しているんですよ。そのバイタリティーは、多分この年代の人たちはみんな持っていると思います。いざというときの力の出し方というか(笑)。
なので、今回演じる恵子のようなアグレッシブな役もフットワーク軽くできるのかなと思います。これからも、ここまで積み重ねてきた経験を活かしていきたいです」

【松下由樹 プロフィール】
1968年7月9日生まれ。愛知県出身。1983年、映画「アイコ十六歳」でデビュー。
1987~1988年、NHK「ヤングスタジオ101」にダンサーとしてレギュラー出演。
1989年、ドラマ「オイシーのが好き!」で初主演。「想い出にかわるまで」「クリスマス・イヴ」「週末婚」「29歳のクリスマス」「ナースのお仕事」「臨場」土曜ワイド劇場「おとり捜査官・北見志穂」シリーズ(主演)など、代表作多数。

【第1話】
2025年春、「人気俳優が担当マネージャーをナイフで刺した」という衝撃的なニュースが報じられる。そのニュースの裏には、歪んだ愛情が暴走した末に辿り着いた、隠された真実があった―。
数か月前、デビュー前から育て上げた国民的女優(安達祐実)に裏切られ、絶望のどん底にいたベテランマネージャー・吉川恵子(松下由樹)。
そんな中、街で偶然すれ違った森山拓人(野村康太)に運命を感じ、彼を芸能の世界へと招き入れる―。
新人俳優としてデビューすることになった彼をスターにするためには手段を選ばない恵子だが、彼へ向ける愛情は次第にエスカレートしていき、いつしかマネージャーとしての域を超えていくようになり…。歪な関係が紡ぐ狂愛サスペンスがいま、幕を開ける!

(取材・文/玉置晴子)

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