今すぐ食べたい。もっと話したい。どこかに遊びに行きたい。「待てない」とは、圧倒的に子どもの領分だろう。人気イラストレーターの最新作の絵本を開くうち、ほおが緩みっ放しになるのは、子ども心が加速度的に解放されていくからだ。
なんといっても、題名の「まてない」に、「の」がだめを押しているし。
私たちは大人になるたびに待つことが増えていく。話題のお店に行列を作って待つ。通勤や通学列車を待つ。この辺りはまだいい(あまり好きではないけれど)。でも、人が成長することを待つ。時間が解決することを待つ……。何と難しい「待つ」ばかり出てくることか。
様々な待てない人々をふんわり、のほほんと描くヨシタケシンスケさんの今作には、子どものほか、悩める大人たちも出てくる。少しほっとさせられる。
『りんごかもしれない』をはじめ、多くの人に親しまれる描き手だ。東京・京橋の美術館「CREATIVE MUSEUM TOKYO」で、展覧会も開かれている。(ブロンズ新社、1430円)(三)
WACOCA: People, Life, Style.