01:14 躁状態とうつ状態
03:23 治療について
06:37 治療方法
10:06 あくまで脳という「臓器」の病気

今日は「双極性障害 I型、II型(躁うつ病)」について解説します。
双極性障害とは「躁とうつを繰り返す脳の病気」です。

双極性障害は、昔は「躁うつ病」と呼ばれていました。今は「双極性障害」という呼び名に変わっています。I型とII型では躁状態の程度が違います。 

重い躁状態とうつ状態があると「双極性障害 I型」
軽い躁状態とうつ状態があると「双極性障害 II型」です。 

■躁状態とうつ状態

「躁状態」では元気で活動量が多くなり、多弁で自信満々になりお金もたくさん使ってしまいます。ハッピーというのとはちょっと違うのですが、とにかくエネルギッシュな時期になります。

「うつ」はその逆でエネルギーが低下している状態です。活動量が低下し、元気がなく、落ち込んでいて自信もなくなってしまいます。

この「躁状態」と「うつ状態」を繰り返します。
診断基準とは少し違いますが、臨床的には躁状態は1ヶ月、うつ状態は3~6ヶ月くらい続くイメージです。

「気分の波が激しいので私は躁うつ病ですか?」と言う患者さんもいらっしゃるのですが、気分の波が激しいから躁うつ病ということではない。
時期によって「躁の時期」と「うつの時期」が人が変わったかのように起きるのが躁うつ病です。

また、躁とうつを交互に繰り返すのではなく、だいたい「うつ→うつ→躁→うつ→躁→うつ→うつ」という感じでうつが多いです。ずっとうつが続いていて躁が見つからない躁うつ病もあります。
抗うつ薬を追加すると躁転するのでわかるというパターンもあります。そういったケースを「双極性障害 III型」と言ったりします。

■治療について

きちんと治療をしていないと、だんだん躁とうつの波が大きくなってしまいます。
10代~20代の発症が多いと言われていますが、最初のうちはアップダウンの波も小さいので気づかれず、中高年になってから気づかれることもよくあります。

・自己中断、低め安定?
治療の自己中断が多いのも躁うつ病の特徴です。
躁うつ病はうつの時と躁の時で性格が変わってしまうほど違うので、うつや躁が酷い時のことをあまり覚えておらず、自分の中でも一体感がないことがあります。そうすると、自分が病気だという意識が持てず通院をやめてしまう人もたくさんいます。

また、人間はだいたい自己評価が高いので、普段の自分は調子の良い時の自分だと思っていることが多いです。
ましてや躁状態を経験していると、真ん中のラインより少し上が自分の「普通」のラインだと思っています。
ですから治療では「低め安定」を目指しましょうと言われます。それは本人にとっては低めでも、第三者から見れば真ん中のラインだからです。

・入院になる?
躁が激しくなると、喧嘩をしたり、クレジットカードで買い物をしすぎて借金が嵩んでしまったりすることもあるので、入院になるケースもあります。

うつから躁に行く時は自殺のリスクも上がるので入院になることが多いです。
入院も医療保護入院など家族の同意による強制入院が多いです。

・発達障害、人格障害≒双極II型?
鑑別としては、発達障害や人格障害の人が双極性障害 II型と誤診されることもあります。
ADHDや人格障害の人で気分の波が激しい人は、そのアップダウンゆえに双極性障害だと誤解されることがあるのですが、話を聞いてみると躁とうつのフェーズがはっきりせず、原因がしっかりあり、なにより発達障害や人格障害の特徴が隠れていたりします。

■治療方法

治療は気分安定薬と抗精神病薬を使います。

<気分安定薬>
リチウム:躁○ うつ○ 再発予防○
バルプロ酸:躁○ うつ? 再発予防○
ラモトギリン:躁× うつ○ 再発予防○

リチウムが一番使いやすいです。

<抗精神病薬>
MARTA(クエチアピン、オランザピン):躁○ うつ○ 再発予防○
ルラシドン:躁? うつ◎ 再発予防?
リスペリドン、アリピプラゾール:躁○ うつ△ 再発予防○

MARTAが使いやすいのではと思われると思いますが、副作用が結構あります。
ルラシドンは新しい薬です。

<副作用>
リチウム:手の震え、服用中の妊娠で子供の心奇形のリスク
バルプロ酸:アンモニア血症等
ラモトリギン:皮膚炎、躁転
リチウムとバルプロ酸は採血によって血中濃度を測りながら使う薬です。

抗精神病薬全体の副作用:過鎮静、パーキンソン症状(手の震え、歯車様固縮、仮面様顔貌)、アカシジア

クエリアピン、オランザピン:糖尿病、代謝異常(太る)

躁うつ病は薬でのコントロールが難しいです。低め安定を目指すということもあり、本人が納得する形での治療が難しかったりします。再発も多いので予防的に薬を飲んでいなければいけないのですが、自己中断してしまうことも結構あります。

躁うつ病の場合は発症が若いのでなおさら病気を受け入れるのが難しいのですが、しっかり説明をして飲んでもらうのが大事かと思います。

■あくまで脳という「臓器」の病気
 
精神の病気は「心の問題」だと思われがちですが、躁うつ病は「脳の問題」です。

脳という「臓器」の問題なので、キャラクターや人格を否定されているわけではありません。ですが、周りの人も理解できず自分の人格が否定されたように感じますし、自分でも否定したくなってしまいます。

そこはあまり深く考えないことです。薬をしっかり飲めば良いという「ただの病気」です。
そのバランス感覚をどう理解できるかというのが、治療のポイントではないかと思います。

★noteでも書いています。「双極性障害Ⅰ型、Ⅱ型(躁うつ病)」https://note.com/wasedamental/n/n4414749ec512

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双極性障害(躁うつ病)について、症状から治療法まで全て説明します

躁うつ病(双極性障害)の薬物治療について解説します

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『精神科医がこころの病気を解説するChとは?』
 一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
                  早稲田メンタルクリニック 益田裕介

『自己紹介』
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年早稲田で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。

【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3版

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