コメの高値が続いています。10月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月より2.3%上昇し、このうち「米類」は58%余り上昇しました。ことしの新米の10月の相対取引価格は、すべての銘柄の平均で去年の同じ月と比べて57%上昇し、2か月連続で過去最高を更新しました。スーパーなどの状況のほか、高値が続く理由や見通しなどについてまとめました。
10月の新米の相対取引価格 過去最高を更新
農林水産省は11月19日、JAグループなどの集荷業者がコメを卸売業者に販売した際の相対取引価格を発表しました。それによりますと、ことしの新米の10月の相対取引価格は、すべての銘柄の平均で去年の同じ月と比べて57%上昇し、2か月連続で過去最高を更新しました。
【産地別 価格上昇率】
北海道産「ななつぼし」63%
秋田産「あきたこまち」55%
山形産「つや姫」35%
新潟・魚沼産「コシヒカリ」22%
農林水産省は、コメの高値が続く理由について農協が農家に前払いする「概算金」が増えたことや、集荷業者の間でコメの確保に向けた競争が激しくなっているためだとしています。
農林水産省では、9月下旬からスーパーなどでのコメの販売量は減少しているとしていて、今後、価格にどのように反映されるのか注視することにしています。
高値が続くコメ 代わりに麺を買い求める人も
東京・墨田区にあるスーパーでは、9月に新米が入荷してからもコメの価格が例年に比べて高い状態が続いています。
比較的安いものでも5キロあたり2980円と、去年の同じ時期に比べて8割近く値上がりしていて、例年は毎週行っているコメの特売もできなくなったということです。
コメの値段が高い状態が続き、代わりに麺を買い求める人の姿もみられました。
「スーパーイズミ」五味衛社長
「新米が出たら少し安くなると思って期待していたお客さんもいた。値段が下がらず非常に大変だと感じる。例年並みの値段に落ち着いてほしい」
広がる「公共冷蔵庫」 コメ求める声が
物価高が続く中、生活に困った人たちが街なかに設置された冷蔵庫から、食料などを受け取ることができる、「公共冷蔵庫」という取り組みが広がっています。
埼玉県草加市のスーパーの敷地内にある建物には冷蔵庫や棚が設置され、企業や一般家庭から寄付された食料品や日用品が並んでいます。
支援の対象になるのは、生活に困っているひとり親世帯などで、事前に登録すると、必要なものを無償で持ち帰ることができます。
運営する団体によりますと、利用する世帯はおととし6月に「公共冷蔵庫」を設置してから増え続け、いまは600世帯以上になったとしています。
特にコメの価格が高いのでこちらに置いてある時は持って帰っています。子どもたちも喜ぶのでこうした支援はありがたいです。
利用者にアンケートをとったところ、価格が上がっているコメを求める声が多く寄せられましたが、十分な寄付がなく、安定的に提供できていないということです。
公共冷蔵庫「コミュニティフリッジ草加」を運営する草加商工会議所青年部の植田全紀さんは「物価高の影響もあり問い合わせが増えています。特に主食のコメの寄付が滞っているため、ぜひ多くのスーパーや小売店に寄付してほしいです」と話していました。
消費者物価指数 米類58.9%上昇
総務省によりますと、家庭で消費するモノやサービスの値動きを見る10月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月より2.3%上昇しました。
このうち、食品の値上がりは続いていて、「生鮮食品を除く食料」は3.8%上昇し、上昇幅は前の月から0.7ポイント拡大しました。
このうち「米類」は58.9%上昇し、比較できる1971年以降で上昇幅は最も大きくなりました。去年産のコメの需要が引き続き大きいことに加えて、新米の価格も上昇したことが要因とみられます。
このほか、▽「チョコレート」が19.3%、▽国産の「豚肉」が6.5%、▽オレンジジュースは29.8%、それぞれ上昇しました。原材料価格の上昇や、猛暑の影響で供給が減ったことなどが要因だとしています。
コメの値段 “すぐに大きく下がることにはならない”
第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、10月の消費者物価指数について、食料品や雑貨といった、生活に身近な品目の値上がり幅が特に大きいとしたうえで、次のように話しています。
〇消費者物価指数
円安によってコストが上昇し、企業が価格に転嫁することで値段が上がりやすくなっている。円安の状況次第だが、来年、2025年の半ば以降には値上がりが鈍化するとみられる。しかし、プラス幅が縮まるだけで物価は高どまることが予想され、消費者の負担感の解消は簡単にはいかないだろう。
〇コメについて
新米の収穫で、不足を理由に買えないといった状況は脱しているとみられるが、人件費や肥料などの生産コストが上がっているため、値段がすぐ大きく下がることにはならないとみている。
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