Google Cloudは27日、「Google Workspace」や「BigQuery」などの最新情報を紹介するイベント「Gemini at Work – Google Workspace」と「Gemini at Work – Data for AI」を開催した。ここでは企業におけるGemini for Google Workspaceの活用について紹介する。

Google Workspaceは22日に、「Gemini for Google Workspace」の対応言語を拡大し、日本語に正式対応した。Google ドキュメント、スプレッドシート、ドライブ、Gmailなどのサイドパネルから、日本語でGeminiに作業依頼や要約、情報収集などを依頼できるようになった。

Google Cloud Google Workspace 事業本部 執行役員の上野 由美氏は、「生成AIは自動化が難しかった知的労働を加速する」とし、生成AIが世界のGDPを7%押し上げるという調査を紹介。特にマーケティングや営業、ソフトウェア開発でのプラスの影響が指摘されている。

一方、労働市場については、雇用が失われる可能性と雇用を増やす可能性の両方の側面があるという。世界経済フォーラムの調査によれば、8,300万の雇用が失われる一方で、9,700万の雇用創出効果を見込んでおり、自動化される仕事が出るとともに、AIの運用などの新たな仕事を生み出す可能性があるという。「多くの可能性と課題を突きつけるもの」がAIだが、その活用が企業や個人が向き合うべきテーマになっている。

また生成AIでは、特徴抽出などの特定用途だけでなく、文章作成やコンテンツ作成、指示に基づくデータ処理など、これまで人が担ってきた多くの作業を代替できる。そのため、検索や整理・分析などの従来の基本スキルだけでなく、AIに目的を正確に指示できるスキルも必要になってくるという。

企業によるAI活用において、重要な課題は「データの適切な管理」。AIに作業を依頼するためには「アクセス可能な場所にデータがある」「必要なデータに確実にアクセスできる」「自社の業務データとの連携にコストが掛かりすぎないこと」などが必要で、膨大なデータをAIに委ねるためにも、データが整理されていることが、企業におけるAI活用のポイントとなるとした。

Google Workspaceの活用については、Google Cloud Google Workspace カスタマー エンジニアリング アジア太平洋地域 統括本部長の佐藤 芳樹氏が説明。企業におけるGeminiや生成AIの応用のポイントを解説した。

Google Workspaceは、ビジネス向けに設計されており、データプライバシーやデータ管理はエンタープライズ利用に適しており、そこに蓄積したデータを活用できる点が「Gemini」の強みという。通常の生成AIがアクセスできない情報もGeminiでは活用できるほか、社内データをAI活用する「RAG」の構築など、業務データのAI活用が容易となる。

Geminiの応用例としては、多国籍企業におけるドキュメントの翻訳やオンボーディング(入社トレーニング)プログラムの強化、業務・財務データを使ったデータ分析や、市場動向や競合調査などを紹介した。

Google Cloudでは、企業における多くのAI導入事例を見てきているが、その中でも上手くいく企業だけでなく、失敗する企業も見られるという。

失敗する事例としては、「AIの細かい機能比較から入る」ケースが多いという。変化が大きい生成AIのサービスにおいて、厳密に機能をテストしながら結果を判断していくのは無駄で、期待値がズレているという。テストが終わる、1カ月、2カ月後には意味がなくなっている場合が多い。

成功例として重要なのは「活用促進の仕組みづくり」。積極的に社内でワークショップなどを開催し、情報を共有することが必要となる。相談窓口などを作るほか、AI活用に明るい「チャンピオン」ユーザーを育成し、その人に聞きながら業務応用を強化していく企業は成果が出やすいという。

Googleの調査では、Gemini活用により、週当たり105分、2時間弱の時間削減効果があり、77%はGeminiがなかった時代には戻れないと回答。確実な生産性向上を実感されているとした。

日本においても、Geminiが日本語で利用可能になり、Google WorkspaceのサイドパネルからGeminiを活用可能。また、全てのGoogle WorkspaceにGeminiが利用可能となるため、積極的に活用するよう呼びかけた。

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