アングル:独仏政局危機で欧州経済活性化が後退 改革に遅れ

 過去数十年間にわたり欧州連合(EU)をけん引してきた2大経済国フランスとドイツで政局危機が起こり、欧州経済は低迷から抜け出す活性化の取り組みが後退しつつある。写真は、エッフェル塔を眺める人々。2023年10月、パリで撮影(2024年 ロイター/PETER CZIBORRA)

[9日 ロイター] – 過去数十年間にわたり欧州連合(EU)をけん引してきた2大経済国フランスとドイツで政局危機が起こり、欧州経済は低迷から抜け出す活性化の取り組みが後退しつつある。加盟27カ国、計4億5000万人のEUでは高齢化が進み、経済改革は必須だが、企業が国際競争を勝ち抜く設備投資は既に決定することが困難になっている。

米国ではトランプ前大統領の返り咲きが決まり、中国とEUは貿易摩擦が激化。中国の関税に直面するフランスのコニャックメーカーから、欧州の電気自動車(EV)産業戦略の明確化を待つドイツの部品メーカーまで、最悪のタイミングで独仏が政治危機に陥った。

今年、EUの委託を受けて147ページの報告書で問題点をあぶり出したエンリコ・レッタ氏はロイターの取材に応じ「フランスとドイツの危機で経済改革実施が遅れてはならない」と述べた。

ドイツのショルツ連立政権の崩壊からわずか数週間後の4日、フランスではマクロン政権のバルニエ内閣が総辞職し、レッタ氏の懸念は深い。EUは公的債務が高水準で対応に苦慮しており、地域の金融安定にとってドイツとフランスの政治危機が「潜在的な隕石」(予測不能で破壊的な影響力となりかねないリスク)になると警鐘を鳴らす。

2008年の世界金融危機以降、EUの1人当たりの国内総生産(GDP)成長率は米国の後塵を拝している。元凶とされるのは生産性の低迷から、分断化されたままの資本市場や広範な銀行部門に至るまで幅広い。ロシア軍による2022年のウクライナ侵攻後は対ロシア制裁が欧州の製造業から安価なエネルギー源を奪う形となった。

加盟各国で極右と極左の両政党が台頭し、議会やEU機関で合意形成が以前にも増して難しくなっており、欧州経済が長年抱える懸案への対策は見通しが厳しい。

「われわれにとって毒だ」―。ドイツ自動車部品大手ボッシュ(ROBG.UL)のシュツットガルト工場の経営協議会長はショルツ連立政権の崩壊によって生じた不確実性をこう切って捨てた。EVなどを対象にした産業政策は来年2月の総選挙後まで明確な方向性が出そうになく、委員長はいら立ちを隠せない。

<通商政策で結束できるか>

航空大手ルフトハンザ(LHAG.DE), opens new tabは、欧州他国に比べて高い空港使用料の削減を政府に求めているが、なしのつぶてだ。ある幹部の話では、同社は基幹業務の拠点をイタリアの首都ローマなどに移管する可能性もある。フランスの航空宇宙・防衛企業サフラン(SAF.PA), opens new tabは来年初めにカーボンブレーキの新工場建設地を決定する予定だが、政治的安定が鍵となると前週明らかにしている。候補地にはフランスのほか米国とカナダが挙がっている。

インフレで全般的にコスト高となっているにもかかわらず、議会で2025年度予算案が通過せず、緊急のつなぎ予算が必至の情勢となったことを受け、オリビエ・アンドリース最高経営責任者(CEO)は記者団に「防衛分野では財政的な圧力が起きるだろう」と警戒感を表明した。

EUが中国製EVに追加関税の適用を始めると発表した数日後、中国はEU産ブランデーを対象に反ダンピング(不当廉売)措置を課すと公表した。こうした動きもフランス経済に影を落としかねない。

国立コニャック協会(BNIC)は壊滅的な影響を受けかねないと危機感を表明した。ただ、マクロン大統領が対中貿易摩擦を解消すると国民に約束したことに言及し「多くの利害関係者の生存がかかった緊急措置を、内閣不信任投票が妨げてはならない」と指摘した。

トランプ次期米大統領が輸入品全てに少なくとも10%の関税を課すとして世界を震え上がらせていることは、EUにとって結束力を試す機会だ。しかし、加盟各国ごとに保護したい産業を抱え、互いが緊張関係にある。今週EUが南米ブラジルやアルゼンチンなどでつくる関税同盟メルコスル(南部共同市場)と自由貿易協定(FTA)に関して仮調印した際、そうしたEUが抱える問題が無残に露呈された。

EU史上最大の貿易協定として歓迎される協定だが、発効手続きが終了すれば、ドイツには自動車や機械の新市場開拓という利益がもたらされる半面、輸入から農業部門を守りたいというフランスの利益と対立することになる。

両国の政局は現在、流動的な状態で、同協定の最終的な行方は一段と不透明になっている。あるフランス外交筋の言葉を借りれば「これで話は終わりではない」。

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Joanna reports on airlines and travel in Europe, including tourism trends, sustainability and policy. She was previously based in Warsaw, where she covered politics and general news. She wrote stories on everything from Chinese spies to migrants stranded in forests along the Belarusian border. In 2022, she spent six weeks covering the war in Ukraine, with a focus on the evacuation of children, war reparations and evidence that Russian commanders knew of sexual violence by their troops. Joanna graduated from the Columbia Journalism School in 2014. Before joining Reuters, she worked in Hong Kong for TIME and later in Brussels reporting on EU tech policy for POLITICO Europe.

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