日経サイエンス 2025年2月号
特集:めざすは月
日本の民間月着陸船「RESILIENCE(レジリエンス)」がいよいよ打ち上げられる。2024年11月に発射基地がある米フロリダ州への輸送が完了し,早ければ2025年1月に米スペースX社のファルコン9で月に向けて飛び立つ。日本発の宇宙ベンチャーispace(アイスペース)が進める月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション2に位置づけられており,月着陸船の名の通り「再起」を誓う挑戦となる。
「気が抜けないところはあるが,着陸を成功させる自信はある」。CTOの氏家亮は2024年9月,機体公開の記者会見で語った。初挑戦となったミッション1は2023年4月,民間初の月着陸まであと一歩のところまで迫りながら失敗に終わった。
その後,月着陸ラッシュが到来した。2024年1月には宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月探査機「SLIM」が5カ国目となる月着陸を成功させた。2月には米インテュイティブ・マシンズの月着陸機「Nova-C」が民間初の月着陸を達成し,米航空宇宙局(NASA)のペイロードを月面に届けた。6月には中国の月探査機「嫦娥6号」が月の裏側に着陸し,サンプルを採取して地球に持ち帰ることに成功している。
民間初の月着陸は逃したが, CEOの袴田武史は「先頭グループにいることが大事だ」と語る。姿勢を崩して横倒しで月面に降り立ったNova-Cは,宇宙関係者の間では「Partial Success(部分的成功)」とも呼ばれる。袴田は「我々はFull Success(完全成功)を目指す」と10年以上にわたって月着陸ミッションを率いてきた矜持を示した。
著者
林 公代(はやし・きみよ)
日本宇宙少年団情報誌編集長を経て,2000年からフリーライター。世界各地でロケット打ち上げや望遠鏡などを取材し,30年以上にわたって宇宙・天文分野を中心に取材を続けている。『星宙の飛行士』(油井亀美也宇宙飛行士と共著),『宇宙に行くことは地球を知ること』(野口聡一宇宙飛行士,矢野顕子と共著),『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之と共著)など著作多数
続きは2025年2月特大号の誌面でどうぞ。
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