10日の金融市場で、英国債とポンドが再び下落。奇跡的な成長と経済の安全保障、公的財政の安定を掲げて政権入りしたリーブス財務相だが、就任から半年で早くもそのもくろみは潰えようとしている。
英国が世界的な債券安の中心となる中で、リーブス氏は市場の信頼維持に苦戦している。同氏とスターマー首相は昨年の総選挙で「責任ある財政」を唱えて労働党にとって14年ぶりの政権奪回を実現させたが、投資家の反乱により借り入れコストが上昇し、公的財政が悪循環に陥るリスクが生じている。
ロンドン時間10日午前10時時点で10年債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、4.85%。前日は一時4.9%を超え、2008年以来の高水準を付けていた。国債利回りの上昇が続けば経済を圧迫し、リーブス氏が向こう数週間に計画しているとされた「成長戦略に関するスピーチ」も修正を迫られそうだ。
ポンドは4日続落し、ドルに対し0.2%安の1.2285ドルと2023年以来の安値付近。
英10年債利回りの推移
Bloomberg
元英中銀エコノミストで、ファゾム・コンサルティングのマネジングディレクターであるエリック・ブリトン氏は「英政府は財政のコントロールを失っている。財政が軌道を完全に外れ、緊縮と増税を強いられることが現在のリスクだ」と指摘。「数年は持つかもしれないが、それで終わりだ。次回の選挙で大敗するだろう」と述べた。
リーブス財務相にとっては、昨年10月の予算案で見込んだ財政のゆとりが100億ポンド(約1兆9500億円)に満たず、少な過ぎたことがあだとなっている。利回り上昇で利払い費用が増加するため、このゆとりは今やほぼ消滅した。市場が落ち着き、利回りが低下に向かうとしても、今回の展開は将来のあらゆる財政政策に影を落としそうだ。
オズボーン氏時代の元英財務相顧問で、現在はマクロ経済コンサルティング会社ブロンドマネーの最高経営責任者(CEO)、ヘレン・トーマス氏は「リーブス財務相は多大な問題を抱えている。先手を打って対応する必要がある」との見解を示した。
原題:UK Bond Selloff Puts Reeves’ Economic Project on the Brink (1)(抜粋)
U.K. Yield Curve Shifts Higher(抜粋)
WACOCA: People, Life, Style.