西田亮介の週刊時評
【西田亮介の週刊時評】ユニークでありながら現実的な面も併せ持つ新たなスキーム
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地域政党「再生の道」の設立を発表し、写真に納まる石丸伸二・前広島県安芸高田市長=15日午後(写真:共同通信社)
(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
「前菜」は時事通信記者への逆質問
2024年東京都知事選挙で170万票近い得票で2位に入り、注目を集めた前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が、いよいよ今夏の東京都議会議員選挙に向けて動き出した。1月15日に都内で記者会見を開いたのである。
本稿ではその概要を紹介し、速報的な所感を述べる。なお記者会見の全容は各種ネットで視聴することができる。これまでの選挙の常識、政治の常識にとらわれない、しかし打ち手としてとてもユニークで練られたスキームが公表された。
ぜひ読者諸兄姉も自身の目で見てほしい(もちろんそのような紹介の仕方それ自体が石丸氏の構想に資する面もあり、それを見越した周到さも今回の会見というより石丸氏の打ち手の肝であるともいえる)。
◎【石丸新党は?記者会見】なぜテレ朝に激怒?謎だらけ新党の全容は?【ReHacQSP】
そもそも会見の開催自体が不穏当なものであった。もともと都庁記者クラブでの開催が告知されていたが、直前に開催情報がネットなどに漏れたことから、開催場所を変更し、「参加資格」をマスコミと100万フォロワー以上のネット媒体に限定した。
ジャーナリストは誰でも名乗ることができる。それゆえリスク管理のため制限したのだという。
会場への入場を巡って入口で押し問答になり、入場を断られたジャーナリストらの批判の声はネットなどでも散見された。
全体で1時間半強の記者会見は、都庁記者クラブの幹事社である時事通信社への情報漏洩のルートの所在と、ルールをリスク管理の観点から見直すことができるかという逆質問から始まった。
会場に座っていた時事通信社の記者と思しき人物が回答していたが、これは少々酷というものだろう。日本型組織においてルールの変更をその場で即答できることはよほどの責任者がいない限りは難しい。
合議体であれば確約どころか回答も難しいことも明らかであろう。石丸氏が知らないはずはないから、いってみればこれはメインディッシュの前の前菜のようなものだと捉えるべきだ。
居心地の悪い空気とともにこのようなやり取りに10分が費やされた頃、いよいよ「新党」構想の発表が始まった。本会見で発表されたのは「都議選のポイント」「特記事項」「候補者への支援」「選考プロセス」である。その後に会場の記者と質疑が行われた。
ところで早くもネットの一部に「2期8年厳守が唯一の公約とはいかなることか」「政策がないのはどういうことか」といった趣旨の批判が見受けられるが、筆者の考えではそれらは正確ではない。
詳しくは後述するが、石丸氏がこの日公表したのは、前述のように4つの「都議選のポイント」、4つの「特記事項」、6つの「候補者への支援」、そして「選考プロセス」であった。
おそらく石丸氏のスライドの冒頭「概要」に「2期8年厳守」が強調されていたことから「唯一の公約」などと理解したのかもしれないが、それよりもむしろ他のポイントや支援、選考などに実に多くのユニークな内容が示されているだけに、そちらに注目すべきだと思える(「概要」スライドには、「目的」として「地域政党として、広く国民の政治参加を促すとともに、自治体の自主性・自立性を高め、地域の活性化を進める」が、「目標」として「2025年6月の都議選に向けて候補者を擁立する」が、「綱領」として「多選の制限のみ(2期8年を上限とする)」と記されていた)。
なにはともあれ順を追って概要を紹介しよう。
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