安全保障上の観点からは前任の大失態を挽回した尹錫悦大統領、高く評価されるべき
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韓国の憲法裁判所に2度目の出廷をした尹錫悦大統領(1月23日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
1.北朝鮮の脅威を正しく認識している大統領
北朝鮮の核ミサイルの脅威が飛躍的に増大する中、今一度、韓国の2人の大統領の政策を振り返ってみたい。
文在寅前大統領の融和政策と尹錫悦大統領の国防態勢の再構築を比べ、どちらが国家の安保を高めたのか、危機に向かわせたのかを考察する。
北朝鮮は、米朝の交渉の中で何度も「核ミサイル開発を凍結する」と言っては油断させて支援物資を獲得しつつ、その裏で核ミサイルの開発を継続してきた。
この30年間を振り返ってみても、北朝鮮は移動式のICBM(大陸間弾道ミサイル)、極超音速滑空体を含む各種ミサイルの開発に邁進しており、止まることはなかった。
北朝鮮の金正恩総書記と米国のドナルド・トランプ大統領(1期目)との交渉においても、金正恩氏は開発を凍結するそぶりを見せたが、彼の陰謀を見破ったトランプ氏は合意せず、交渉は成立しなかった。
北朝鮮はその後も核を開発し続け、各種ミサイルを完成させており、日米韓の大きな脅威になっている。
金正恩総書記に対して、文在寅大統領と尹錫悦大統領は、真逆の態度で対応した。
文在寅氏が進めたのは太陽政策と呼ばれる。北朝鮮を脅威と捉えず、相互に理解し合える関係を構築しようとした。
一方、尹錫悦氏は文在寅氏時代に緩めた対北防衛政策を改め、北朝鮮を再び脅威として安全保障政策に取り組んだ。
尹錫悦大統領が非常戒厳宣言を発令し、それを理由として1月19日に内乱容疑で逮捕された。
しかし、北朝鮮の脅威から韓国を守る政策を実施してきた尹錫悦氏に内乱罪を適用するのは理解しがたい。
文在寅氏と尹錫悦氏、韓国防衛のための対北朝鮮政策として、どちらが正しい政策を採ったのか――。
北朝鮮の謀略を真に受け、笑顔で融和政策を進める陰で、北朝鮮の脅威について韓国国民に誤った情報を流した文在寅氏。
一方で尹錫悦氏は、華々しい政策はないかもしれないが地道に安全保障政策を進めてきた。
韓国を北朝鮮の脅威から守る政策を実行してきたのは尹錫悦氏であり、北朝鮮の謀略に騙され、侵攻を受ける危機に進んでいったのは文在寅氏であるように見える。
文在寅氏は、金正恩氏との交渉の陰で韓国国民に誤った情報を提供してきたこと、その結果、韓国が危機状態に近づきつつあったこと、そして尹錫悦氏がそれを阻止する施策を着実に採ってきたことを以下に述べる。
考察にあたっては、韓国の安全保障政策を直近の短期間で見るのではなく、北朝鮮が朝鮮戦争以降60~70年の間行ってきた核ミサイル開発と悪行と、それに対する韓国の政策を歴史的に見ていく必要がある。
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