フジテレビの10時間半に及ぶ「やり直し記者会見」は多くの視聴者に衝撃を与えた。ネットメディア研究家の城戸譲さんは「いまの記者会見はエンタメ化している。その原因は、情報を知りたい視聴者を見もしない一部の自称記者・ジャーナリストにある」という――。
写真=共同通信社
記者会見で挙手する記者らを見つめる、フジテレビ社長辞任を発表した港浩一氏(中央)=2025年1月27日午後、東京・台場のフジテレビ
記者会見がエンタメ化している
『女性セブン』『週刊文春』の報道に端を発した、中居正広さんによる女性トラブルが尾を引いている。中居さんは芸能界引退を発表したが、社員の関与が疑われているフジテレビの姿勢に疑問が相次ぎ、ついにはフジによる「やり直し会見」での一部記者の態度に波及した。
筆者はネットメディア編集者として、あらゆる謝罪会見での質疑応答や、それをめぐるSNSの反応を見てきたが、ここまで話題となった会見は珍しい。なぜ盛り上がったか、背景を考えてみると、「会見のエンタメ化」が高まった結末に思える。
10時間半のほとんどが「カオス」だったフジの会見
フジによる最初の会見は、取材陣を限定することで、極めてクローズドに開催された。しかし、それに批判が相次いで、開かれた形での会見を実施。その様子はフジが、看板の「月9」ドラマを休止してまで、事実上の生中継(被害女性らのプライバシーを守るために10分遅れで放送)が行われた。
その長さ、なんと10時間半。「炎上ウォッチャー」を自称している筆者は、当然ながらリアルタイムで全編を見たが、会長・社長の辞任以外、ほとんど新情報が出ることはなかった。そもそも、日弁連ガイドラインに基づく第三者委員会が設置され、そちらでの調査結果が出る3月末になるまで、フジテレビは新たな情報を出しようがない。いくら質問されても、ほとんどの返答が「結果待ち」となることは予想できた。
新情報が現れない一方で、一部記者の質問姿勢に注目が集まった。なかなか質問そのものに入らず、長々と持論や叱咤激励を行う者もいれば、指名されてもいないのに延々とヤジを飛ばす者、文春などの報道では「被害女性」の素性が明かされていないにもかかわらず、ネット上でウワサされている人物であるという前提のもとで質問する者など、「カオス」としか言えない場面が、10時間半のほとんどを占めた。
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