ノーベル経済学賞受賞者で、人工知能(AI)の未来に関する議論でも注目を集めているマサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アセモグル教授は、中国の新興企業DeepSeek(ディープシーク)の登場が生んだ熱狂と警戒心の両方を冷めた目で見ている。

  ディープシークが発表したAIモデルの「R1」について同氏は、オープンAIのような米企業が開発したAIより安価かつ効率的な代替モデルを提供する目覚ましい成果だと評価。ただ、R1のダウンロードに殺到している人の多くは、オープンAIの「ChatGPT(チャットGPT)」の有料版を使っている人と同様、好奇心を満たすための「おもちゃとして使っている」に過ぎないと語った。

  アセモグル氏は、新しいテクノロジーがもたらす破壊的な経済効果に関する研究で、経済界では以前から知られている。「ディープシークがビジネスに採用され、企業にとって革命的となるような明確な道筋はまだ見えない」とインタビューで語った。

  チャットGPTが登場して以降、同氏はAIがどのように発展するかの研究を続けている。AIに奪われる職、あるいは少なくともAIに大いに依存する職は向こう10年でわずか5%に過ぎないというのが、同氏の計算だ。

AIに奪われる職はわずか5%、MITの著名経済学者が現実チェック

  こうしたアセモグル氏の見解は労働者には朗報だが、生産性の急上昇を見込んでAIに巨額を投じている企業には悪い知らせとなる。

  「自分が間違っていることを望む。生産性が向上することを願っている。それは本当にクールなことだと思うが、まだ目にしてはない」と同氏は語った。

原題:Nobel Winner Says DeepSeek Is ‘a Toy’ for Curious Customers(抜粋)

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