ベッセント米財務長官にとって、米10年国債利回りはトランプ大統領が目指す低金利実現の重要指標だ。
トランプ政権の2期目が始まり3週間が経過したが、早期の利回り大幅低下はほとんど期待できない。
7日には利回りが再び上昇した。同日発表された1月の雇用統計で非農業部門雇用者数が堅調なペースで増え、平均時給が予想を上回る伸びを示したことが手掛かり。一方、米国人は物価上昇につながるトランプ政権の関税発動に身構えているようだ。ミシガン大学の調査によると、消費者はこの先1年のインフレ率を4%超と、米金融当局目標の2倍以上のペースを予想している。
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この結果、利回りは景気の先行きがより明確になるまで高止まりし、レンジ内での推移が続くと債券トレーダーは想定している。
JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「雇用統計は労働市場の底堅さを示唆しており、米金融当局に利下げを求める圧力はない」と指摘した。
消費者・企業向け融資金利の主な基準で、長期見通しに大きく左右される10年国債利回りは1月初めのピークから低下してきた。だが、関税や減税、国家債務増大に伴う国債相場への下押し圧力にトレーダーが備え始める状況で、利回りは昨年9月半ばの水準をなお1ポイント近く上回ったままだ。
インフレがなお高止まりする一方、景気は順調に推移しており、米連邦公開市場委員会(FOMC)は先月、利下げ休止を決定した。先物市場では9月まで金利据え置きが続く公算が大きいとの見通しが織り込まれている。
財務省は先週、1-3月の連邦政府借入必要額の予測を下方修正し、中長期債の発行規模を少なくとも「向こう数四半期」据え置くとするガイダンスを維持したことで、市場で広がっていた供給懸念が幾分和らいだ。
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それでもトランプ大統領がバイデン前大統領の政策を急転換させ、関税など今後の見通しに大きな不確実性が生じる中で、アナリストは慎重姿勢を崩していない。トランプ氏がどの程度大幅な減税を目指すのか、それが財政赤字にどう影響するかもなお不透明だ。
コロンビア・スレッドニードルのグローバル金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は「大きな賭けに動きたくなる環境ではない」と認識を示した。
今週の焦点は、市場の需要を示す新たな米10年債および30年債入札と、11、12両日に予定されるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言となる。
12日には労働省が1月の消費者物価指数(CPI)を発表する。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値によると、前年同月比2.9%上昇と、前月と同じ伸び率を示すと見込まれる。
原題:Bond Market Gains Fade as Trump, Inflation Keep Yields High (1)(抜粋)
(5段落目以降にチャートと11段落目以降に今週の焦点を追加して更新します)
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