カギは「水の流入防ぐ」“新たな穴”“バイパス”も…救出は“最短3カ月”八潮市陥没【報道ステーション】(2025年2月12日)

埼玉県八潮市の道路陥没現場の近くに開けられた捜索用の穴。このほぼ真下にトラックの運転席が確認され、運転手の男性がいる可能性が明らかになりました。ただ、県によると、救出までには早くても3カ月程度かかるといいます。

老朽化する日本の地下のインフラ。12日も各地で破損の事例が相次いでいます。

■大阪で水道管相次ぎ破損

大阪府堺市で12日、水道管が破損して道路に水があふれ、周囲は通行止めになりました。水は道路にできた段差からあふれていました。この下で水道管が破損して漏れ出た水がアスファルトを押し上げたとみられます。

堺市では、埼玉県八潮市の陥没事故を受けて、下水道管だけではなく水道管の緊急点検も行ってきました。ただ、水道管の点検は太い管に限ったもので、今回破損したものは対象外。同じく点検の対象外だった別の水道管も、12日に破損して一時5世帯が断水しました。どちらも設置から50年以上経った水道管で、水道局は老朽化が原因とみています。

堺市上下水道局
「水道管からの漏水は市内で年間600件以上起きていて、毎日どこかで修繕が行われています。人手も費用も足りず、交換できていないものも多いのが現状です」

水道管は下水道管に比べて原則、耐用年数が10年早く設定されています。耐用年数を超えた管の割合も水道管の方が高く、下水道管の3倍以上です。

11日に千葉県で水が噴き出したのも水道管の破損でした。

住民
「すごい雨が降ってきたと思ったが、それにしては異常だった。八潮のやつもあったので心配になった」

40年の耐用年数にはまだ達しておらず、設置から38年。ただ、水道管を管理する企業団体によると、こちらの破損の原因も老朽化だったということです。

■15日ぶり 節水要請解除も…

そして、道路陥没事故から16日目の埼玉県八潮市。周辺では12日も、転落したトラック運転手の男性(74)の捜索、そして大量に流れる水への対策が進められています。

県は、バイパスの工事やポンプによる下水道の汲み取りを進めてきたことなどが水道使用量の抑制と同程度の効果があったとして、12日正午をもって12市町に出していた節水の要請を解除しました。

市内の美容室では…。

ルチェリス スタイリスト 恩田貴幸さん
「節水要請があった後から12日まで(売り上げが)5割減ぐらいの影響があった」

シャンプーにタオルの洗濯など水を使わざるを得ませんが、この陥没事故の影響で客足も遠のいたといいます。

ルチェリス スタイリスト 恩田貴幸さん
「お客様ありきなので、来ていただかないと我々も生活が成り立たないので。早く救助されることと、早い復旧を願っています」

また、別のお店でも。マグロがウリの鮮魚店でも解凍の時や捌く時は、どうしても流水を使っての作業になります。

まえだや 前田好雄店主
「水じゃないと。こうやってチョロチョロ。本当はもっとダッと出すんだけど、なるべくチョロチョロとやっている」
(Q.12日から自粛要請が解除されるが、今後の水の使い方は)
「それは日々こんな感じにやっていくしかない。道路陥没が完全に直ったら、ある程度はやれるけど。多少は自粛しておかないと。解除であーよかったじゃないからね。まだ良いわけじゃない」

こう感じる市民は少なくありません。

八潮市民
(Q.12日正午から節水要請解除だが)
「(運転手は)見つかったの?ちゃんと出てこないと…」
(Q.なかなか節水解除とはいかない)
「ちょっとできないよね」

■救出作業を阻む“水流”“硫化水素”

気になるのはいつ“どのように”男性を救出するのかです。県によれば、地下10メートルに埋設されている下水道管の上を迂回するように、仮の下水道管を作る予定だということですが、この“仮の下水道管”を通すのに3カ月はかかるといいます。

また、運転席があるとされる所への直接的なアプローチも進めてはいるものの、実際に救出できるのは“仮の下水道管”の完成を待ってになるといいます。

なぜ別の穴から先に救出できないのか。それは下水道管の中にある“水圧”と“有毒ガス”です。水道管を流れる水流とは、どの程度のものなのでしょうか。

小木逸平アナウンサー
「足がその場に置いておけません。前に行くのは完全に不可能です」

下水道管内とほぼ同じとされる秒速1.5メートルの水流。深さは60センチですが、体験すると掴まって立つのがやっと。救出にはロボットなど別の手立てが見つからず、人が人を探すため、有毒ガスの硫化水素への対策も講じなければなりません。そのため、“仮の管”の完成なくして前には進めません。

埼玉県の大野知事は今回の計画について、こう話しました。

埼玉県 大野元裕知事
「本来、県はレスキューをする実力部隊を持っていない。救出部隊が何をできるか、ずっと環境を作ってきた。実は元々バイパス案はあった。ところが時間がかかる。基本的には救出が先なので」

その後、運転手の男性が下水道管の中にいる可能性が高まったことから、当初出ていた仮の下水道管を作る計画を進めたと説明しました。

埼玉県 大野元裕知事
「私が実は絵をかいて『これできないの?』と言ったら『それやりましょう』という話に戻った。それも検討しましょうと」

水道使用の自粛は今後、大雨などにより再び呼び掛ける可能性があるとしています。

■下水管の“新工事”懸念は

埼玉県が開始した、陥没した道路周辺の新たなバイパス工事と、救出活動のための新たな穴掘り工事。男性の救出活動の活路となるのでしょうか。地盤工学が専門の芝浦工業大学・稲積真哉教授に聞きました。

(Q.課題は何ですか)

芝浦工業大学 稲積真哉教授
「下水の流入を止める点ではバイパス工事は有効。下水以外の地下水などの流入を止められなければ、救出活動に支障をきたす可能性がある。流入を止めるには周辺を薬液などで止水し、セメントで固めた後、地下水の流れをコントロールする必要もある。ただ、その作業にも時間を要するため、3カ月という工期はかなり急ピッチでの作業が予想される」

また、穴掘り工事に関してはこう指摘します。

芝浦工業大学 稲積真哉教授
「地盤が緩い場所に新しい穴を掘るのはリスクが高い。水の流入を抑えることができれば、陥没穴からの救出活動も選択肢の1つになるのでは」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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