株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:佐野 傑)は本日、日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2024年 日本の広告費」を発表した。詳細は下記のとおり。

 

<2024年 日本の広告費の概況>

◆2024年の総広告費は、通年で7兆6,730億円(前年比104.9%)となり、2021年から4年連続で成長し、3年連続で過去最高を更新した。日本の広告市場は、好調な企業収益や消費意欲の活発化、世界的なイベント、インバウンド需要の高まりなどに支えられ、「インターネット広告費」を中心に「マスコミ四媒体広告費」、「プロモーションメディア広告費」の3つ全てのカテゴリーが成長した。

◆インターネット広告費は、3兆6,517億円(前年比109.6%)となり、前年より3,187億円増加した。SNS上の縦型動画広告をはじめ、コネクテッドTV(インターネットに接続されたテレビ受像機)などの動画広告需要が一層高まり、市場全体の拡大に寄与した。

◆マスコミ四媒体広告費は、2兆3,363億円(前年比100.9%)と、3年ぶりに前年越えとなった。また、プロモーションメディア広告費は、1兆6,850億円(前年比101.0%)と、前年に続き増加した。特に、人流がコロナ禍前に戻ったこともあり、屋外や交通、POP、イベント・展示・映像ほかといったリアルな場面での成長が目立った。

 

図表1 日本の総広告費の推移

(注)2019年に「物販系ECプラットフォーム広告費」と「イベント領域」を追加推定(2018年以前の遡及修正は行っていない)。

 

<媒体別広告費の概況>

 「日本の広告費」は、(1)マスコミ四媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディア広告費の合算。それぞれの広告費には制作費も含まれている)、(2)インターネット広告費(インターネット広告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費の合算)、(3)プロモーションメディア広告費(屋外、交通、折込、DM<ダイレクト・メール>、フリーペーパー、POP、イベント・展示・映像ほかの合算)、に大きく3つのカテゴリーに分類される。

 

 (1) マスコミ四媒体広告費 2兆3,363億円(前年比100.9%)

 「新聞広告費」は減少したものの、「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」が増加し、3年ぶりに前年を上回った。

 

(2)インターネット広告費 3兆6,517億円(前年比109.6%)

 動画広告を中心に成長し、総広告費に占める構成比は47.6%に達した。内訳について、「インターネット広告媒体費」は、2兆9,611億円(前年比110.2%)と二桁成長となった。

 マスコミ四媒体由来のデジタル広告費における「テレビメディア関連動画広告費」は、653億円(同147.4%)となり前年に続き高い成長を示した。「物販系ECプラットフォーム広告費」は、オンライン通販の拡大もあり、2,172億円(同103.4%)へと増加した。「インターネット広告制作費」は、動画広告市場の拡大などにより、4,734億円(同108.6%)へと増加した。

 

(3)プロモーションメディア広告費 1兆6,850億円(前年比101.0%)

 インバウンド需要などを背景に人流がコロナ禍前に戻ったことで「交通広告」や「屋外広告」、「POP」が増加した。また、海外アパレルブランド、ホテル、企業PR施設、自動車関連店舗における催事企画などの増加により、「イベント・展示・映像ほか」も前年を上回り、プロモーションメディア全体の成長に寄与した。

 

図表2 媒体別広告費<2022年~2024年>

<媒体別広告費詳細>

  (1) マスコミ四媒体広告費(業種別 マスコミ四媒体別広告費は添付PDFの図表7を参照)

①新聞広告費 3,417億円(前年比97.3%)

・不透明な世界情勢や、物価・人件費高騰などの影響も受け、新聞広告出稿は伸び悩んだ。パリ2024オリンピック・パラリンピックなどの大型スポーツ大会や各種イベントの開催があったものの、広告費を押し上げるには至らず減少した。

・業種別では、前年は減少した「流通・小売業」が前年比106.9%と回復した。一方で、「食品」は同   84.7%と前年に続き減少し、コロナ禍からの回復傾向にあった「交通・レジャー」も同98.9%となった。

 

②雑誌広告費 1,179億円(前年比101.4%)

・7-9月期以降に回復し、出版社・雑誌編集部などによるタイアップコンテンツのSNS上での二次展開や、広告主へのオリジナル企画コンテンツ提供などが増加したことにより、通年でプラス成長となった。

・紙の出版物推定販売金額は減少し、前年比94.8%となった。内訳は書籍が同95.8%、雑誌が同93.2%。一方で、電子出版市場は同105.8%と前年に続き成長した。紙と電子出版を合わせた出版市場全体は前年を下回り、同98.5%となった。(数字出典:出版科学研究所「季刊 出版指標」2025年冬号)

・業種別では、景気や消費意欲の回復に伴う需要の高まりで、「精密機器・事務用品」「飲料・嗜好品」が増加した。一方で、雑誌広告費シェアの高い「ファッション・アクセサリー」「化粧品・トイレタリー」は減少した。

 

③ラジオ広告費 1,162億円(前年比102.0%)

・様々な音声コンテンツを届ける音声メディアへの関心が高まり、radikoを含むデジタルオーディオ広告の増加とともに、地上波ラジオ放送における広告市場も、通年で前年を上回った。

・業種別では、日常シーンに溶け込みやすいラジオメディアの特徴を生かした広告が増加した「食品」(前年比117.8%)や、コロナ禍からの回復により外出・行楽需要が前年に続き高まった「交通・レジャー」(同116.6%)などが二桁成長となった。

 

④テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連) 1兆7,605億円(前年比101.5%)

◇地上波テレビ 1兆6,351億円(同101.6%)

・番組(タイム)広告費は、パリ2024オリンピック・パラリンピックをはじめとした大型スポーツ大会や各種イベントの開催に伴い好調に推移したものの、令和6年能登半島地震による被災や、不透明な世界情勢や、物価・人件費高騰などの影響を受け、前年を下回った。

・スポット広告費は、半導体不足の解消などにより「自動車・関連品」が復調したほか、インバウンド需要など消費行動の活性化も捉えた「薬品・医療用品」「化粧品・トイレタリー」や、コロナ禍からの回復により外出・行楽需要が前年に続き高まった「交通・レジャー」が好調に推移し、前年を上回った。

◇衛星メディア関連 1,254億円(同100.2%)

・BSやCSにおける通信販売市場は堅調に推移し、前年を上回った。

・BSはコロナ禍後も出稿業種の入れ替えで増加傾向を維持しているが、CSとCATVは緩やかな減少傾向が続いている。

 

(2)インターネット広告費

①インターネット広告媒体費 2兆9,611億円(前年比110.2%)

・引き続き好調を維持し、二桁成長となった。

・特に動画広告が堅調で全体を押し上げた。中でも、SNS上の縦型動画広告などの需要の高まりが寄与した。

マスコミ四媒体由来のデジタル広告費 1,520億円(インターネット広告媒体費の一部、同117.5%)

・引き続き好調を維持し、二桁成長となった。

 

・新聞デジタル 195億円(同93.8%)

新聞デジタル以外の動画広告への予算シフトや、広告単価の低下による影響が大きく、前年を下回った。予約型広告は、前年に減少傾向であったタイアップ広告で回復がみられ、オンラインセミナーなど企画型の広告出稿やターゲット施策が増加した。運用型広告は、パリ2024オリンピック・パラリンピックなどの大型スポーツ大会や各種イベントの開催でPV(ページビュー)数は増加したものの、単価の低下による影響が大きく低調であった。一方で、官公庁や金融業種は増加傾向にあり、コロナ禍からの回復により、リアルイベントやセミナーへの需要が高まった。

 

・雑誌デジタル 637億円(同104.3%) 

雑誌メディアの休刊や刊行形態の変更に伴い、ウェブメディアのリニューアルやSNSアカウントへのリソース強化が行われた。SNS上のコンテンツ拡充によってフォロワー数などが引き続き堅調に推移し、紙媒体やウェブメディアに起因しないSNS内で完結できるタイアップ広告が成長した。また、広告主のオウンドコンテンツの制作や動画の制作・配信など、出版社の強みであるデータ・コンテンツ制作力やコミュニティ力を生かした企画が堅調に推移し、引き続き出版社の広告収益を支えた。

 

・ラジオデジタル 34億円(同121.4%)

前年に続き、Podcastをはじめとする音声メディアでのデジタル展開が注目され、radikoを含むラジオデジタル広告への新規出稿数が増加した。

 

・テレビメディアデジタル 654億円(同146.3%)

テレビメディアデジタルのうち、「テレビメディア関連動画広告」は653億円(同147.4%)と、前年に続き大きく増加した。見逃し無料配信動画サービスは、根強い人気があるドラマやバラエティーの視聴に加え、パリ2024オリンピック・パラリンピックなどの開催によりスポーツのライブ視聴も増加。再生数・ユーザー数ともに順調に増加した。インターネットテレビサービスは、従来のリアリティーショーやドラマ、バラエティー、スポーツに加え、アニメによるユーザー数の増加が顕著であった。

 

②「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」 2,172億円(前年比103.4%)

・前年までと比べると緩やかな成長となった。

・原材料費や物流コストの高騰などを背景にした物価上昇により生活者の節約志向が強まったことや、リアル店舗への顧客回帰によるチャネルの多様化により商品の購入場所が分散したことなどが影響した。

 

③インターネット広告制作費 4,734億円(前年比108.6%)

・インターネット広告の成長に伴い、制作需要も前年に続き拡大した。

・ウェブ動画広告は前年までと比べると緩やかになりつつも成長した。中でも、動画サイトやアプリなどのコンテンツ内に表示される動画広告の制作数は前年に続き増加した。

 

(3)プロモーションメディア広告費

①屋外広告 2,889億円(前年比100.8%)

・ラグジュアリーブランド、飲料、コンテンツ、人材系を中心に多くの業種で屋外広告が活用され、前年に続き増加した。インバウンド需要の高まりに伴い、関連業種での広告出稿が目立った。

・短期看板は、人通りの多い繁華街に設置された大型ボードへの需要が堅調であった。屋外ビジョンは、渋谷、新宿、表参道など都心部で需要が高まり、販売価格の値上げなどもあり成長した。

・ネットワーク型のデジタルOOH媒体は、位置情報などのデータを活用したプランニングと広告配信が可能な媒体として定着し、多様な業種での活用が拡大し成長した。

 

②交通広告 1,598億円(前年比108.5%)

・鉄道は、車内ビジョン、中づり、ステッカーなどの車両内の媒体が前年を上回った。駅媒体も、新規大型媒体の新設や、大型サイネージや大型ボードなどジャック系媒体への高い需要により堅調に推移した。

・空港は、インバウンド需要の高まりにより、デジタルサイネージを中心に前年を上回った。

・タクシーは、一部媒体の値上げや新たな媒体メニューの新設が売上に寄与したものの、BtoB企業による予算規模の縮小に伴い、前年を下回った。

 

③折込 2,442億円(前年比94.8%)

・新聞購読率の低下や経費高騰に伴う販促費の抑制により出稿量が減少し、前年を下回った。

・物価高の影響で節約志向が高まり、流通業を中心に生活支援策を訴求する媒体として活用された。また、 2024年10月は第50回衆議院議員総選挙に伴い、出稿が増加した。

・業種別では、スーパー、家電量販店、ファミリーレストランなどが増加。サービス業では、旅行・宿泊業や買い取り業者が好調に推移した。一方、百貨店や教育・教養は減少した。

 

④DM(ダイレクト・メール) 2,863億円(前年比92.3%)

・印刷資材などの制作費高騰による広告主のマーケティング予算の見直しや、2024年10月の郵便料金改定などの影響もあり、前年を下回った。大量発送型のDMから、購買決定に対する効果の高いDM需要への変化により、発送数などが絞られ、減少傾向が継続している。

・データマーケティングを活用したパーソナライズDMや、CRM(顧客関係管理)などのデジタル施策と連動したDMへの需要は高い。無宛名便DMは、不動産業などでエリアマーケティング効果が評価され、従来の折込から移行する動きもあり、増加している。

 

⑤フリーペーパー※ 1,306億円(前年比96.5%) 

・グルメ・飲食、求人情報、住宅・不動産、ショッピングなどの業種が回復したものの、依然として物流費や原材料などの高騰が影響し、発行部数や発行頻度、広告主数などが縮小した。

・SDGsなど社会的意義を意識した広告出稿を行う企業にとって、地域密着型フリーペーパーの需要は高く、地域産業活性化のためのメディアとして活用する傾向がみられた。

・デジタル印刷や他メディアとの連携などの施策も定着し始めた。

※フリーペーパーは、タブロイド判タイプのフリーペーパー・雑誌タイプのフリーマガジン・電話帳の総称。

 

⑥POP 1,483億円(前年比101.5%) 

・コロナ過以降の人流回復に伴うリアル店舗でのコミュニケーション・ニーズは前年に続き高まった。また、デジタル施策との融合が進み、体験型売り場やポップアップストアの需要が高まった。2024年は商業施設の開業やインバウンド需要の高まり、IPコラボ施策などで売り上げが増加し、前年を上回った。

 

⑦イベント・展示・映像ほか 4,269億円(前年比111.0%)

・イベント領域は、メーカーの販促イベントや周年イベントなどは活発化したものの、一部大規模イベントが開催されなかったこともあり、1,656億円(前年比97.2%)と前年を下回った。

・展示領域では、テーマパークへの大型投資が続き、専門店市場の海外アパレルブランド、ホテル、企業PR施設、自動車関連店舗の新装・改装需要やインバウンドなどの拡大が追い風となり、需要が回復した。 一方、複合商業施設市場や博物館・美術館などの文化施設では大型案件が減少した。

・映像関連は、AIやDXなどの技術革新により、企業のマーケティング・プロモーション活動における動画映像の需要が高まった。オンライン展示会やウェブ講演会・セミナーなどに付随する配信動画、商品サービス紹介動画などへの制作需要が前年に続き高まった。教育やエンターテインメント分野でも動画映像は拡大傾向にある。

・シネアド(シネマ・アドバタイジング)は、邦画アニメを中心に話題作が多く公開されたこともあり、前年を上回った。

 

【その他、広告関連市場】 ※「日本の広告費」市場には含まれない

・商業印刷市場 1兆7,600億円(前年比98.3%)

デジタル化による紙離れに対して、各社が売上維持・向上を図ったものの、コロナ禍からの反動増の落ち着きや、郵便料金改定や配送コストの上昇などの影響により前年を下回った。

 

・ポスティング市場 1,481億円(前年比100.6%)

市場全体は堅調に推移し、前年を上回った。大都市圏を中心に、新聞折込の代替として官公庁・自治体関連の全戸配布などの需要は前年に続き堅調で、手軽なスポーツジムやインドアゴルフなどが増加した。買い取り系も増加傾向にある。

  

・DM制作関連市場 1,119億円(前年比100.4%)

DMの発送数は減少しているものの、印刷資材などの高騰によるコストの増加に加え、より効率的なDM活用のためのデータマーケティングやレスポンス測定のためのツールの導入といった制作関連費の増加により、前年を上回った。

 

<業種別広告費(衛星メディア関連を除くマスコミ四媒体のみ)について>(添付PDFの図表6を参照) 

「エネルギー・素材・機械」「自動車・関連品」「化粧品・トイレタリー」「交通・レジャー」など9業種が増加した。

 

<「インターネット広告媒体費」の内訳について>

株式会社CARTA COMMUNICATIONS、株式会社電通、株式会社電通デジタル、株式会社セプテーニの4社は、インターネット広告を種別や取引手法などの切り口でみる「2024年 インターネット広告媒体費詳細分析」を3月中旬に発表する予定。

 

電通メディアイノベーションラボ 主任研究員 森永陸一郎による「2024年 日本の広告費」の解説記事は、『ウェブ電通報』でご覧いただけます。https://dentsu-ho.com/articles/9205

 

「2024年 日本の広告費」の解説動画は『電通ウェブサイト ナレッジ & データ』でご覧いただけます。https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/

 

(※その他の図表は添付のPDFをご覧ください。)

                                            以上

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