日本銀行の植田和男総裁は27日(南アフリカ時間)、関税を含めた米政府の政策や日本の対応などについて「まだ不確実なところが非常に大きい、多いと認識」していると述べた。ケープタウンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の終了後に記者会見した。

  トランプ政権には他の重要政策もあり、そうした新しい展開を総合的に考えた上で、「世界経済やマーケットへの影響、それを通じた日本経済、日本の物価見通しへの影響」を考えて最終的に日本の金融政策の判断につなげるとし、これまでと同じ姿勢だと述べた。

  関税政策などを含め「地政学的リスク」とも言えるそうした不確実性や、それが実行された場合の影響に関する不透明性は、さまざまな国の参加者に共有されていると感じたという。

  トランプ米大統領は27日、カナダとメキシコに対する関税に関して3月4日に発動すると述べた。また中国に対しても、同日に追加で10%の関税を課すとした。

  国内の長期金利については「経済や物価の情勢に対する市場の見方、 あるいは海外金利の動向を反映して変動することは当然想定される」と指摘。

  「通常の市場の動きを超えて長期金利が急激に上昇するというような例外的な状況では、機動的なオペを打つ、あるいは工夫をするということも考え得る」と述べ、先週の衆院予算委員会での答弁から考えは変わらないと話した。

  短期的な長期金利の動きや現在の状況については、具体的なコメントは控えた。

  日銀は1月の金融政策決定会合で政策金利を0.5%程度に引き上げた。その後も政策委員による追加利上げに前向きな発言や良好な経済指標が続き、市場には次の利上げ予想を前倒しする動きも出ている。1月会合直後のエコノミスト調査で政策金利を0.75%程度に引き上げる時期は7月が56%を占めたが、足元のスワップ市場では6月までの利上げを5割程度織り込んでいる。

   三村淳財務官は26日のG20初日の討議後に、日銀の政策に対する市場の見方と「齟齬(そご)はない」と発言。市場では利上げ容認と受け止め、一時1ドル=148円後半まで円高が進んだ。欧州時間に入ると円は下落基調に転じ、ニューヨーク時間午前には一時対ドル150円台となった。27日の日本の債券市場では、長期金利の指標となる新発10年債利回りが一時4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.405%に上昇した。

  今回のG20は米国のトランプ政権発足後では初の会議だったが、ベッセント米財務長官の欠席などで実効性に乏しい会合となった面は否めない。加藤勝信財務相も国会審議への対応を優先するために欠席し、代わりに斎藤洋明財務副大臣が出席した。斎藤副大臣は記者会見で、世界経済は高い不確実性に直面していると述べた。

(植田総裁の発言などを加えて更新します)

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