1月の米個人消費支出(PCE)統計では、自動車など財への支出が減少。厳しい寒波などが影響した。またサービス分野への支出も減速し、この状況が続いた場合、経済の底堅さを巡り懸念が生じる可能性がある。
キーポイントインフレ調整後の実質PCEは前月比0.5%減前月比での減少率としては約4年ぶりの大きさ市場予想は0.1%減PCEコア価格指数は前月比0.3%上昇-市場予想と一致前年同月比では2.6%上昇-2021年早期以来の低い伸びに並ぶ予想も2.6%上昇PCE総合価格指数は前月比0.3%上昇-予想と一致前年同月比では2.5%上昇-予想も2.5%上昇
実質PCEの減少は、昨年末のホリデーシーズンが堅調だったことに加え、その後に寒波に見舞われたことなどが影響した。特に自動車の購入が大きく落ち込んだほか、娯楽用品などの項目も減少した。
EYのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「消費者は1月に一休みした感じだ。年内に消費者が慎重姿勢を強めることに、これがつながるのかどうかが重要だ」と指摘。「サービス分野への支出が鈍かったことから、単にホリデーシーズンの反動だけが原因というわけではないのかもしれない」と分析した。
US Spending Falls, Inflation Offers Some Relief
Real spending dropped in January amid cold weather
Source: US Bureau of Economic Analysis
一方、物価面では明るい兆しが見られた。連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視するPCEコア価格指数が小幅な伸びにとどまった。このところ物価上昇圧力が再び強まっていることを示唆する指標が相次いでいたが、今回のPCE統計を受けてインフレ面では市場に安堵(あんど)感が広がりそうだ。
米金融当局者は、利下げを再開する前にインフレ率の有意な低下を目にする必要があるとの認識だ。特にトランプ大統領の政策が物価に与える影響が不透明なことを踏まえ、当局者らは慎重な姿勢を見せている。
PCE統計発表後、外国為替市場ではドルが堅調を維持。円は対ドルで一時151円ちょうど近辺まで下落したが、その後は150円台前半から後半での推移となった。
住宅とエネルギーを除くコアサービス価格は前月比0.2%上昇。食品とエネルギーを除いたコア財価格は0.4%上昇と、2023年1月以来の大幅な伸びとなった。
帰属価格を除いた、いわゆる「市場ベース」のコア価格指数は前月比0.2%上昇。米金融政策当局はここ数カ月、全体的な指標よりも需給のより良い指標として、この数値を参考にしている。
1月の個人所得は前月比0.9%増。社会保障給付金の受給者に対する年次の生活費調整(COLA)も寄与した。インフレ調整後の実質可処分所得は0.6%増加。貯蓄率は昨年6月以来の水準に上昇した。
今後については、物価上昇圧力や新たな輸入関税を含む政策の大幅な変更がどの程度消費の重しになるかがまだ不明だ。1月の統計ではPCEの大半を占めるサービス支出の伸びも低調だった。ただ寒波の影響で公共料金への支出は増加した。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、スチュアート・ポール、イライザ・ウィンガー、エステル・オウ3氏はリポートで、「労働所得の伸びは鈍化しており、この先の個人所得に向かい風となる可能性がある。ただ全体的に見れば、インフレは引き続き2%目標へと向かっており、支出は縮小。2月の雇用者数(3月7日発表)は弱い数字になると予想される。経済の軌道を見ると、現在の金利据え置きが終了すれば、その後の当局の動きは利下げになることが示唆される」と記した。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Spending Drops in Cold Weather, Inflation Gauge Offers Relief(抜粋)
(見出しなど書き換え、エコノミストのコメントなどを追加し、更新します)
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