高年収世帯は高校無償化の対象外だったり高額療養費の負担が大きいなど、冷遇されている面が多い。頑張って年収を増やしても子育ては楽にならない。Money&You代表取締役でマネーコンサルタントの頼藤太希さんは「年収1200万円の子育て世帯の手取り収入は25年前から減り続けている。税金を減らして手取り額を増やす対策を実行すべき」という――。


手をつないで登下校するきょうだい

写真=iStock.com/anurakpong

※写真はイメージです



子育て世帯の手取り収入は減り続けている

2023年2月に「高年収層『子育て罰』のリアル」という記事を執筆しました。その後、2024年10月にはようやく「児童手当の所得制限が撤廃」となりました。


しかしいまだに、子育て世帯の支援策である「高校無償化」には所得制限が存在します。また、「高額療養費制度」は高年収層ほど恩恵が受けられない制度となっています。


年収500万円世帯(70歳未満)であれば「区分ウ」となり、自己負担限度額は8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%、となります。月の医療費が100万円だった場合の自己負担限度額は8万7430円です。


年収1200万円世帯(70歳未満)であれば「区分イ」となり、自己負担限度額は16万7400円+(総医療費-55万8000円)×1%、となります。月の医療費が100万円だった場合の自己負担限度額は17万1820円です。


これらは高年収で手取りが多いのだから、その分生活費、教育費、医療費に回せるだろうということで設計されているのでしょう。


しかし、年収は高いといっても、2000年以降、子育て世帯の「手取り」は減り続けている現実があります。手取り計算のオタクである筆者が、過去を遡って細かく計算した結果をお見せします。


年収と手取りの違いをおさらい

「年収」は1年間に勤め先から支払われた金額の総額です。年収からは、税金(所得税・住民税)と社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)が差し引かれます。介護保険料は40歳以上になると差し引かれます。そうして天引きされた残りの金額が、実際に受け取れる「手取り」の金額です。


【図表1】年収の「額面」と「手取り」のイメージ

2025年現在、40歳以上で専業主婦の妻と15歳以下の子供が2人いる会社員の場合、年収1200万円の手取りは845万7699円、手取りの割合は70.5%です。年収から30%近く差し引かれた金額が手取りになります。


※令和7年度税制改正大綱に記載されている、所得税の基礎控除48万円→58万円で計算しています。


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