「Wizardry」シリーズに連なる,ドリコムの新作タイトル「Wizardry Variants Daphne(ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ)」(以下,ダフネ)のPC(Steam)版が2025年3月6日にリリースされた。
 先行してサービスを開始したスマホ版(iOS / Android)から遅れること5か月,自宅でじっくり遊べるPC版を心待ちにしていたプレイヤーは多いことだろう。

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 サービス開始直後の不具合やサーバートラブルも落ち着きを見せ,2月にはメインコンテンツである「奈落」の第3弾「グアルダ城塞」も追加されるなど,コンテンツの追加も精力的に行われている本作。ゲームとしてのボリューム感も充実してきており,一度は見送った人も,PC版が登場する今なら“始めどき”と言って過言ではない状況にある。

 そこで今回,4Gamerでは本作の開発を手がけるドリコムのディレクター,金山圭輔氏に話をうかがうことにした。PC版の狙いやこれまでのサービスの振り返り,そしてここから目指す先についても聞いているので,本作に興味がある人はぜひチェックしてみよう。
Wizardry Variants Daphne統括ディレクター・金山圭輔氏

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※記事中のスクリーンショットは開発中のビルドで撮影したものであり,製品版とは異なる場合があります。

家でじっくり遊べるPC版が3月6日にリリース

4Gamer:
 本日はよろしくおねがいします。2024年10月のサービス開始から,5か月あまりが経過しましたが,今のところの反響はいかがでしょうか。

金山圭輔氏(以下,金山氏)
 そうですね。「知る人ぞ知るゲーム」を目指していましたが,多くの方に楽しんでいただけたようで,想定よりも大きな反響をいただいています。不具合やトラブルも当初から多く,現在でも少なからずありますが,プレイヤーの皆さんの情熱に支えられた結果だと思っています。

4Gamer:
 ライトなゲーマーにも届いたということですか。

金山氏:
 そうですね。割合的にはWizardryシリーズを始めとした3DダンジョンRPGを遊んできた世代が多いですが,比較的下の世代のスマホRPGプレイヤーの方々も,従来のスマホゲームに少々飽きを感じていたのか,本作に新鮮さを感じてくれているみたいです。

4Gamer:
 確かに,本作はスマホゲームとしては難しいタイトルですね。

金山氏:
 ただ,あえて難しくしようとしたわけではないんですよ。どちらかと言えば,Wizardryシリーズの取っつきずらさを抑えるために,「なるべく簡単にしよう」と意識していました。むしろ一部の方々は「Wizardryにしては簡単」と思っているかもしれません。なので,むしろこれからちょっとずつ難しくしていこうと思ってます(笑)。

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4Gamer:
 Wizardry世代ではないプレイヤーも多いとのことでしたが,プレイヤーの属性としてはどの世代が多いのでしょうか。

金山氏:
 中心は40代男性で,その次が30代と50代が同程度……という感じなので,それでも一般的なゲームアプリと比べると年齢は高めです。性別は圧倒的に男性が多くて……20代の女性プレイヤーともなると,片手で数えるくらいなんじゃないだろうか(笑)。

4Gamer:
 分かりました(笑)。その辺りのお話は後ほどうかがうとして,まず3月6日にリリースされるというPC版について教えてください。大きい画面でプレイできるのがウリかと思いますが,ほかにスマホ版との違いは何かあるでしょうか。

金山氏:
 おっしゃるとおり,横長の広い画面でプレイできるので,これまで見えなかったところまで見えるようになります。またゲームパッドやマウス&キーボードによる操作にも対応していますので,外ではスマホで,家ではPCの大画面でじっくり遊ぶといったことも可能になります。

4Gamer:
 なるほど……横幅が広いと,酒場でメンバー5人が揃ったときでも全員を画面内に写せそうです。

金山氏:
 そうですね。描画範囲が広いので,探索時に光る場所を見つけるのも楽になるかもしれません。

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ゲームパッドやキーボードでの操作にも対応したPC版。Bluetoothによるゲームパッド対応は,スマホ版にも実装してほしいところ

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4Gamer:
 クロスセーブにも対応しているということですが,課金要素である貴石の扱いは,どうなるのでしょうか。

金山氏:
 緑色の貴石「オルグの貴石」は共通で扱えますが,紫色の貴石「エリンの貴石」はストアの規約上,プラットフォームごとの管理になります。例外的に,公式ショップで購入したエリンの貴石だけは,どのプラットフォームでも使えるという。

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[2025/02/07 16:59]

4Gamer:
 ストアページを見ると,日本語と英語のほか中国語(繁体字/簡体字)にも対応するようですが,狙いとしては海外展開の側面が大きいのでしょうか。

金山氏:
 それも目的の一つです。スマホ版の海外プレイヤー比率は2〜3割ほどなので,PC版で海外プレイヤーが増えてくれることを期待しています。

4Gamer:
 となると,コンシューマ版にも期待してしまいますが……。

金山氏:
 今のところ考えてないですが,需要があれば,でしょうか。ただ,ダフネは「リビングのテレビでは遊びづらい世代」に向けて作っているので,出すにしても携帯型のハードがいいかもしれません。

Steamストアページに記載されている要求スペックがこちら。オプションで画質設定を「通常」「速度優先」「低」と変更できるので,ビジネス用のノートPCでも動作しそうだ

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画質設定「低」は2月20日のアップデートで追加された

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想定より多かった,シングルプレイRPGの需要

4Gamer:
 本作の現状と展望について,あらためて聞かせてください。まずリリース直後には,いろいろトラブルがありました。その後にサービス安定化の取り組みが発表されましたが,現状をどうお考えですか。

金山氏:
 まだ道半ばではありますが,体制変更を経て,かなり正常化できたと思っています。リリース直後は開発と運用を開発チームのみで賄っていましたが,それではまったく手が足りていなかったんです。

4Gamer:
 つまり,目算が甘かったと?

金山氏:
 そうですね。開発チームが運用にかかりきりになってしまい,追加コンテンツの制作が進まなくなってしまいました。毎日の不具合修正と問い合わせ対応に追われて,仕様に精通したリーダークラスのメンバーでさえ,目前の対応に集中するあまり,新しい不具合に気付けなくなってしまったりとか。
 今はメンバーが2〜2.5倍ほどに増員されたので,チームを開発と運用に分け,運用チームがイベントやキャンペーン,リリース以降に発見されるバグの修正などを担当するようになりました。一方で,開発チームは「奈落」やサイドクエストの制作に専念してもらっています。

4Gamer:
 なるほど。では今後は安心してもよさそうですね。

金山氏:
 はい。落ち着きを10段階で表すとしたら,当時が「0」で今が「6」ぐらい。もちろん油断はできませんが,冷静さを取り戻して,少しずつやるべきことができるようになってきています。

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4Gamer:
 しかし,それだけ混乱があったのなら,今後のスケジュールにも影響が出たのではないですか。

金山氏:
 リリース前の予定が白紙になるぐらいには,大きく変化しました。理由は二つあって,一つはご指摘のとおり,不具合対応に追われたことで予定に大幅に遅れが出たこと。そしてもう一つは,プレイヤーの反応が思っていたものと違ったことです。

4Gamer:
 プレイヤーの反応というと?

金山氏:
 シングルプレイを楽しんでくれるプレイヤーが,想定より多かったんです。
 我々ドリコムでは,これまでマルチプレイのタイトルを中心に制作してきたので,リリース前はシングルプレイのRPGがビジネス的に成功しえるのか,確信が持てずにいました。なので,リリース後はマルチプレイ系コンテンツの拡充しようと準備を進めていました。

4Gamer:
 ああ,それでマルチプレイ要素の追加を取り止めたわけですか。

金山氏:
 ええ。マルチプレイ要素はいったん白紙にしました。実は2024年12月に開催した「古城跡」イベントも,高難度のフロア攻略という性質とは別の側面として「こういう競い合いってどうです?」ってプレイヤーに問いかけるものだったんですよ。

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4Gamer:
 「古城跡」イベントにはランキングがありましたね。反応はどうだったのでしょうか。

金山氏:
 アンケートなどを通して満足度をグラフにしてみたのですが,早いもの勝ちの「探索優秀者」のランキングはあまり反応がよくありませんでした。一方で,攻略速度を競う「特定区間探索状況優秀者」ランキングは,ある程度楽しんでいただけたみたいです。
 ですので,今後も“バチバチのPvP”などではなく,何らかの形で記録を競うようなものを中心にしたいと考えています。

4Gamer:
 それでいうと,4Gamerで主催させていただいた「『国王救出』チャレンジ」はいかがでしたか。上位陣は3日ほどでクリアしていたようですが。

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[2024/10/12 11:00]

金山氏:
 いやもう,予想外の早さで驚かされました。睡眠以外ずっとプレイして○日間くらい,という予想をしていたんですが,それをはるかに超える速度でした。リリース直後でトラブル続きの最中ではありましたが,全体としては好評をいただけたのではないかと考えています。

4Gamer:
 尋常じゃないスピードでしたね(笑)。

金山氏:
 先のゲーム内の“早いもの勝ち”ランキングと違って,古き良きファミコン時代の「早解き文化」に近いのが良かったのかもしれません。学校の休み時間に,友達と「お前どこまで進んだ?」みたいな話をしていたような。SNSで情報交換できる今からしたら,ずいぶん牧歌的な文化ですけど。

4Gamer:
 そう考えると,マルチプレイがなくても一体感のようなものは作れますね。

金山氏:
 一人で黙々とプレイするのもいいですが,誰かと情報交換して,知恵を出し合いながらゲームを進めていくのもシングルプレイゲームの醍醐味だと思っています。そんな古き良き雰囲気を併せ持ったタイトルに,ダフネを育てていきたいですね。

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コスパが悪くとも茨の道を突き進みたい

4Gamer:
 ここからは,今後のアップデート計画についてうかがいたいと思います。2月20日には,第3の「奈落」であるグアルダ城塞が実装されましたが,方向性として考えていることはありますか。

金山氏:
 先ほどもお話ししたように,1人で遊べるコンテンツを重視したいと考えています。またプレイヤーをなるべく退屈させないように,いわゆる冒険者の追加や月イチのキャンペーンなど,期待の範囲内に留まるだけの更新は,“壊していく”方向にしたいです(笑)。

4Gamer:
 “壊す”とはどういうことですか?

金山氏:
 急に変なものを出してみたり,いつもと違う角度のコンテンツを供給していきたいということです。先のバレンタインイベントもその一つで,誰も想像していなかったもので驚かせてみたかったんですよ。

4Gamer:
 確かにWizardryにバレンタインとは,普通は結びつかないですね(笑)。

金山氏:
 ですよね。幸いプレイヤーの皆さんは楽しんでいただけたようなので,今後も面白そうなことをやっていきたいです。大抵,「コスパが悪い」って止められちゃうんですけど(笑)。

4Gamer:
 むしろ,金山さんは止める側の立場なのでは?

金山氏:
 自分は茨の道を突き進んでいくタイプなので。娯楽には新鮮な驚きがないと,つまらないじゃないですか。だから「ダフネはこういうゲームなんだ!」って,会社を巧みに説得して,コスパの悪い開発をしていこうと思っています(笑)。

4Gamer:
 なるほど……?

金山氏:
 もちろん驚きだけじゃなく,根っこは定番の,プレイヤーが望んでいるものを実装していくつもりです。私も「ベタな話」は大好きなので,そこはブレないように。奇をてらってばかりもつまらないですからね。

4Gamer:
 それは確かに。長期的なロードマップとして,何か考えていることはあるでしょうか。

金山氏:
 メインストーリーの「奈落」にそれぞれ登場する予定のボスキャラクター「十大異形」のデザインはほぼ完成していますので,それらを倒す第1部が終わるまでは,「奈落」を順次追加していく予定です。ただ,元々あった計画が一度白紙になっているので,プレイヤーの皆さんの反応を見つつですね。

4Gamer:
 次の「奈落」がどうなるのか,今の時点でお話しいただけることはありますか。

金山氏:
 グアルダ城塞をプレイした人は,次の「奈落」が“どんなものか”がちょっぴり分かるようになっていますので,まずはそれを探してみてください。そのうえで……そうですね,グアルダ城塞が壮大な作戦と男臭いストーリーが特徴でしたので,それに比べると次はもう少し落ち着いた,静かなものになるんじゃないかなと。

4Gamer:
 「奈落」ごとにテーマが違うんですね。

金山氏:
 テーマというか,リズムのようなものは意識してますね。アクションの次はミステリーといったように,単調にならないようにしたいなと。とはいえ,全体のストーリーラインは決まっていますので,ルルナーデや仮面の冒険者であるプレイヤーの謎,王国や王女の行く末といったものは,これからもお話の軸になっていきます。

仮面の冒険者であるプレイヤーの謎の一つ「逆転の右手」

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4Gamer:
 実装時期はいつ頃になるのでしょう。

金山氏:
 明言はできませんが,少なくとも年内には出したいと思っています。できれば年に3〜4回くらいのペースでリリースしたいところですが,グアルダ城塞もけっこう大変だったので……。開発メンバーが増えたことでスピードアップできればいいんですが,現状,命を削ってやってるところはあります(苦笑)。

4Gamer:
 灰にならない程度でお願いします(笑)。

金山氏:
 灰になっても,ロストさえしなければなんとか(笑)。ただまあ,ドリコムの企業ミッションが「人々の期待を超える」だからなあ。「期待どおり」では50点なんですよね。

4Gamer:
 まだまだ目指すところに届いていない?

金山氏:
 そもそも,今の市場は少なくとも80点は取らないと即淘汰されてしまうような,恐ろしい状況です。だから,生き延びるために仕方なくですね(苦笑)。
 とはいえ,狙って80点や90点を出せるほど,我々はまだ“できたチーム”ではないと思っているので,当面は道なき道――茨の道を突き進んでいかなきゃならない。先の“コスパが悪い”施策で驚かせようというのも,その一つですね。そう思い込んで,なんとか頑張っていこうかなと(笑)。

ドリコム創業以来のミッション「with entertainment〜人々の期待を超える〜」

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