「ディープ・ステート(闇の政府)」は、DEI(多様性・公平性・包摂性)やジョージ・ソロスと並ぶ、保守派にとって最上級の仮想敵だ。しかし、次のような問いを投げかけてみたい。

もし、選挙で選ばれていない、影の人物たちが結集して、幹部として政府機構を掌握し、議会の意思に真っ向から反したらどうなるか?しかも、その多くの人物たちが、共通のビジネス上の利害やコネクションを持っていたとしたら、その組織を何と呼ぶだろうか?

答えは──米国政府効率化省(DOGE)?

米国政府は長年、選挙で選出されていない官僚が、(政策の)糸を引いていることに対して警鐘を鳴らしてきた。ところが、現在の米政府が置かれている状況以上に、選挙を経ていない人物が政府を操ってきた前例があるだろうか? DOGEは米政府が最も懸念していた存在そのものである。イーロン・マスクは、自身が解決したいと主張する対象そのものになっている。

「ディープ・ステート」たる理由

秘密主義?そう、DOGEは、これまで組織図を一度も提出していない。2月25日まで、公的に文書化されたリーダーすらいなかった。そして初期の省内会議では、若い(幹部)職員の身元を明らかにすることを拒否していたのだ。

それでは、DOGEがディープ・ステートかどうか、該当する項目をひとつずつチェックしてポイントを入れていこう。

まず、選挙で選ばれていないか?明らかに選ばれていない。該当欄に1ポイント入れる。

政府外の利害関係者とつながっているか?DOGEは紛れもなくイーロン・マスクの取り巻きが掌握している世界だ。マスク率いるX、スペースX、The Boring Company、そしてテスラの現従業員あるいは元従業員が、無数の連邦政府機関を支配しているか、あるいはそこに深く入り込んでいる。そのなかには、表面上は規制対象の機関も含まれている(その数はどのくらいか?正確に言うのは難しいので、「秘密主義」にもう1ポイント加点しよう)。

公平を期すなら、DOGE職員のなかには社会人経験がなく、あるのは米国政府を解体したいという熱意だけのような人物たちもいる。しかし、いずれにしてもチェック項目に該当する。

そして、これらすべてが、議会ではなく世界一の富豪が決めた行動計画に沿って実施されている。実際にDOGEが立法の枠組みから外れて計画を遂行している証拠を見てみよう。

法的に義務づけられている消費者金融保護局(CFPB)を凍結した。議会が割り当てた約1万件の人道支援契約を一方的に打ち切った。何千人もの試用期間中の職員や派遣労働者たちを、正当な理由もなく解雇した。これ以上に例を挙げる必要もないだろう。チェック、チェック、チェックだ。

「ディープ・ステート」の定義

「ディープ・ステート」という言葉は、定義づけが難しいのも事実だ。その理由は、主に保守系ラジオ・パーソナリティである「グレン・ベックが嫌いなもの」を簡潔にまとめた表現として頻繁に使われるからだ。

それではイーロン・マスクが、どのように定義しているのか見てみよう。マスクは、大統領執務室を2月12日に訪れた際に次のように語った。

「国民から政府への“フィードバックループ”がうまく機能しておらず、官僚支配、官僚主義が主導権を握っているのであれば、民主主義は実際にどんな意味をもつでしょうか?」。そして、次のように付け加えた。「選挙で選ばれていない憲法違反の第4の行政機関として官僚機構が存在しているのです……こんなことを国民は望んではいないし、民意とも一致しません」

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