日産自動車の次期社長は、就任当初から積極的に動ける余地が乏しいだろう。写真は同社のロゴ。オランダ・アーネムで2月撮影(2025年 ロイター/Foto d’archivio)
[香港 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 日産自動車(7201.T), opens new tabの次期社長は、就任当初から積極的に動ける余地が乏しいだろう。日産は11日、内田誠社長が退任し、商品企画責任者を務めるイヴァン・エスピノーサ氏が後を引き継ぐと発表した。トップ交代自体は歓迎すべきことだ。しかしホンダ(7267.T), opens new tabとの経営統合協議を再開する試みや、より大胆な経営立て直し策を講じようとしても、古くからの壁に突き当たる恐れがある。
内田氏が率いる経営陣は、先月にホンダとの協議が破談になる前から足場がもろいように見えた。特に世界最大の市場である中国で日産車は過去数年にわたって販売減少が続き、内田氏は昨年11月、経費節減に向けた緊急の経営改革を表明せざるを得なくなった。ビジブル・アルファがまとめたアナリスト予想に基づくと、この3月期の日産の純損失は現時点で15億ドル前後に上る見込みだ。内田氏が5年前、社長に就任して以来、日産株の総リターンはマイナス29%と、同期間の東証株価指数(TOPIX)の値動きを大幅にアンダーパフォームしている。
Shows Nissan’s total returns have fallen nearly 30% since the company announced Makoto Uchida’s appointment as CEO on Oct. 9, 2019.
エスピノーサ氏は、実に難しい時期に日産のかじ取りを任されることになる。日産は収益力回復のために年間約4000億円(27億ドル)の経費を圧縮する経営てこ入れ策に乗り出している。ただ資産売却をどこまで進めるかといった重要な詳細部分はこれから詰めなければならない。内田氏は11日、新たな提携を模索していることも明かした。
しかし急激な改革が進みそうにはない。理由の1つとして、エスピノーサ氏が日産の長年の提携相手で、議決権の15%を保有する筆頭株主でもあるフランスのノルー(RENA.PA), opens new tabの要求に応えなければならないことが挙げられる。ルノーはスナール会長を含めて2人が日産の取締役に名を連ね、自分たちの利益を積極的に守り抜く態勢を確保。実際スナール氏は、ホンダが初期段階で提示した統合案について、ルノーの意向にそぐわないと主張した。こうなるとエスピノーサ氏がホンダと再協議する道のりは険しくなる。
さらに2003年入社で筋金入りの日産プロパーであるエスピノーサ氏が、販売や収益力を上向かせつつ、ハイブリッド車と電気自動車(EV)に投資し、トランプ米大統領による関税の脅しを切り抜ける新たな戦略を手にすることができるのかどうかは分からない。つまりエスピノーサ氏の「自由度」は非常に限られている。
●背景となるニュース
*日産自動車は11日、内田誠社長が3月31日付で退任し、商品企画責任者のイヴァン・エスピノーサ氏が4月1日、代わりに就任する人事を発表した。 もっと見る
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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