2025年3月5日に科学誌・Natureに掲載された論文で、レーザー光を固体であるとともに液体でもある「超固体」に変換することに成功したと、国際的な物理学者のチームが報告しました。超固体とは一体何なのかや、それを光から生成できた意義について、サイエンス系ニュースサイトのLive Scienceが解説しています。

Emerging supersolidity in photonic-crystal polariton condensates | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-025-08616-9

Laser light made into a supersolid for the first time
https://phys.org/news/2025-03-laser-supersolid.html

Scientists turn light into a ‘supersolid’ for the 1st time ever: What that means, and why it matters | Live Science
https://www.livescience.com/physics-mathematics/scientists-turn-light-into-a-supersolid-for-the-1st-time-ever-what-that-means-and-why-it-matters

Laser Light Transformed Into a Supersolid in Groundbreaking Experiment – The Debrief
https://thedebrief.org/laser-light-transformed-into-a-supersolid-in-groundbreaking-experiment/


超固体は、量子力学によって定義された物質の奇妙な状態であり、その内部では粒子が結晶のように整列している固体であると同時に、粘性のない液体のようにも振る舞います。この場合の粘性とは物質内部の摩擦のことで、物質がどれだけスムーズに流動するかを決めます。また、普通固体はそれ自体では動きませんが、超固体は整然とした格子構造を維持しつつ、粒子の相互作用に応じて流れる向きや密度が変わります。

超固体の形成には極めて低い温度、一般的に絶対零度に非常に近い温度が必要で、十分に低温な最低エネルギー状態になると、熱が粒子同士の相互作用にもたらすノイズがなくなり、物質の挙動は量子力学的な作用に支配されるようになります。粘性がなくなるのもそうした効果のひとつで、超流体と超固体を除くすべての流体は、ある程度の粘性を有しています。

粘性のない流体としては、ほぼ絶対零度に近い温度まで冷却されたヘリウムが有名で、摩擦がなくなった超流動体のヘリウムはグラスの壁をつたって勝手にグラスからこぼれるような不思議な挙動を見せるようになります。


科学者たちは、これまでも原子ガスを用いて超固体を作ってきましたが、今回発表された研究では原子を使わず光から超固体を作り出すというまったく新しいメカニズムが採用されました。

その実現の鍵となったのが、光と物質が結合したポラリトンと呼ばれる準粒子です。研究チームは、まず半導体であるヒ化ガリウムを精密に成形し、レーザー光と相互作用するような特殊な隆起形状を作りました。

そして、このガリウム片の隆起部にレーザーを当てると、光と物質との相互作用によりポラリトンが生成され、隆起部の形状によって動きが制限されて超固体状態となります。言い換えると、光が物質と結合して超固体に凝縮したことになります。

by Nature (2025). DOI: 10.1038/s41586-025-08616-9

超固体は、温度に左右されることなく粒子間の微小な量子相互作用を示すため、量子力学の研究にとって重要です。特に、光から作られた超固体は原子でできた超固体よりも柔軟で取り扱いも簡単なので、超固体の一般的な性質がよりよく理解できるようになると期待されています。

そして、極低温の物質や量子力学の世界に対する理解が深まれば、量子コンピューティングや超電導体、さらには摩擦ゼロの潤滑剤など、まだ想像もできない用途に応用できるかもしれません。

研究チームは、新たに作成した超固体の構造を調査し、その結晶構造に焦点を当てたさらなる研究を継続する予定としています。

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