20日の米株式相場でS&P500種株価指数は反落。この日発表の住宅と雇用に関する経済指標は米経済が持ちこたえていることを示唆したが、貿易戦争がもたらす潜在的影響の方が市場では強く意識され、相場は再び不安定となった。

株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数5662.89-12.40-0.22%ダウ工業株30種平均41953.32-11.31-0.03%ナスダック総合指数17691.63-59.16-0.33%

   米国株関連デリバティブ(金融派生商品)の満期日が集中する「トリプルウィッチング」を翌日に迎えることも、市場参加者を神経質にさせている。今回は約4兆5000億ドル(約670兆円)相当のオプションなどが満期を迎え、相場の動きを増幅させる可能性がある。

  モルガン・スタンレーのダニエル・スケリー氏は「最近の調整は底を打ったのかもしれないが、荒れ相場が終わったわけではないだろう」と指摘。「政策の不透明感は消えておらず、市場は依然としてセンチメントの変化に敏感だ」と述べた。

  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は前日、トランプ大統領が推進する関税措置のインフレ率押し上げ効果に関しては、「一過性」のものとなりそうだとの認識を示した。ただ、トランプ政権が発動を予定している相互関税は、どの国・地域にどの程度の関税が課されるのか依然として明らかになっていない。

  アンジェレス・インベストメンツの最高投資責任者(CIO)、マイケル・ローゼン氏も「政策の不透明感が続く限り、相場は上がったり下がったりする」と話す。ブルームバーグの本社で行われたインタビューで同氏は「投資家心理は極めて不安定になり、それが市場にも反映される」と語った。

Stocks Wipe Out Gains

S&P500種株価指数

出所:ブルームバーグ

  ベスポーク・インベストメント・グループのストラテジストは「S&P500種はほぼ一本調子で下げていた状態から、いくらか安定を取り戻しつつある」とした上で、「安定化は反転上昇を意味するわけではない。通常、相場が上昇するのに十分なエネルギーを得るまでには一進一退が続く」とリポートに記した。

  ベスポークは、米個人投資家協会(AAII)の週次調査で弱気心理が58.1%になったことにも言及。これで4週連続で55%を上回る結果になったが、これは同調査史上初めてだという。

  個別銘柄では、アップルが0.5%安。同社は人工知能(AI)分野での遅れを取り戻すべく、異例の幹部刷新を行っていると、事情に詳しい関係者が明らかにした。

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国債

  米国債相場はまちまち。10年債利回りはほぼ変わらずの4.24%。2年債利回りは引き続き4%を下回る水準で推移した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.56%0.70.15%米10年債利回り4.24%-0.4-0.09%米2年債利回り3.96%-1.3-0.32%  米東部時間16時32分

  この日発表の経済指標では、2月の米中古住宅販売件数が予想外に増加。住宅供給の増加や天候の回復が追い風となった。 先週の米新規失業保険申請件数は前週からほぼ変わらず。比較的低い水準を維持し、労働市場の底堅さを示した。

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為替

  外国為替市場ではドルが上昇。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は続伸し、2日間の上昇率としては2月28日以来の大きさとなった。  

為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1267.753.360.27%ドル/円¥148.78¥0.090.06%ユーロ/ドル$1.0859-$0.0044-0.40%  米東部時間16時35分

  ジェフリーズのブラッド・ベクテル氏は「投資家は四半期末および4月2日の関税リスクに備えているのかもしれない」と指摘。「今四半期の大きな取引はドル・ショートだったので、そのエクスポージャーを減らしているのではないか」と述べた。

  英ポンドは軟調に推移。イングランド銀行(英中央銀行)はこの日、政策金利を4.5%に据え置いた。ベイリー総裁率いる金融政策委員会(MPC)は8人が据え置きを支持、1人は0.25ポイント利下げを主張した。ハト派寄りとみられた3人の政策委員も利下げ見送りに姿勢を転じた。

関連記事:英中銀、8対1で金利据え置き決定-ハト派3人も慎重姿勢に転換

  ユーロは対ドルで一時0.8%下落。 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、通商を巡る不確実性が高まっているとして、金利に関して確実な約束はできないと言明した。

関連記事:ECBラガルド総裁、高い不確実性に警戒感-金利の約束できない 

  円は対ドルで前日とほぼ変わらず。1ドル=148円80銭付近でもみ合いとなった。

ドル円相場の推移

ドルの対円相場

出所:ブルームバーグ

 

原油

  ニューヨーク原油先物は続伸。トランプ政権がイラン産原油への制裁を強化したことが相場の追い風となった。

  米財務省はイラン産原油を購入した疑いで中国の製油所とその最高経営責任者(CEO)を制裁対象に加えたほか、イラン産原油を輸送する「影の船団」との関連が疑われる複数の船舶にも制裁を科した。

  今回の動きは、トランプ政権が1期目で実施した「最大限の圧力」政策の復活を告げるものだ。トランプ大統領は先頃、イランの最高指導者ハメネイ師に宛てた書簡で、新たな核合意に達するための期限は2カ月だと通告した。

  CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダーのレベッカ・バビン氏は「トランプ大統領は交渉が決裂した場合、イランの原油輸出に著しい影響を与える構えだ」と指摘した。

  ライスタッド・エナジーの地政学分析責任者、ホルヘ・レオン氏によると、最大限の圧力政策によって世界の市場から消えるイラン産原油は、最大で日量150万バレルとの計算になる。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は、前日比1.10ドル(1.6%)高の1バレル=68.26ドルで終了。終値で68ドルを上回るのは約2週間ぶり。ロンドンICEの北海ブレント5月限は1.7%上げて72ドルちょうどで引けた。

Oil Rises After US Treasury Announces Fresh Sanctions

WTI先物の推移

出所:NYMEX

  金スポット価格は反落。トランプ大統領の関税でインフレ率に上昇圧力がかかるとみられる中、米金融当局は年内に政策金利を大幅に引き下げることができるのか、懐疑的な見方が強まった。

  アジア時間の取引では一時、0.3%高の1オンス=3057.49ドルまで買われ、再び最高値を更新する場面もあった。その後はドルの上昇も逆風となり、下落した。

  金は昨年の大幅上昇に続き、年初来でも16%値上がり。逃避需要に押し上げられ、相次ぎ最高値を更新している。足元では複数の大手銀行が金相場の見通しを引き上げており、マッコーリー・グループは3500ドルまで上昇すると予想している。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時57分現在、前日比4.48ドル安の1オンス=3043.31ドル。一方、ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は2.6ドル(0.1%)高の3043.80ドルで引けた。  

Gold Hits Record After Fed Lowers US Growth Outlook | Bullion is up 16% so far this year

金スポット価格の推移

出所:ブルームバーグ

 

原題:Stocks Halt Fed-Fueled Rally as Trade Fear Lingers: Markets Wrap

Dollar Rises; Pound Falls as BOE Keeps Rates Steady: Inside G-10

Oil Advances as US Ramps Up Sanctions Against Iranian Crude

Gold Eases From Record Amid Doubts Over Fed Path, Rising Dollar(抜粋)

(ダウ平均の変化率の数字を訂正します)

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