概要
2025年度後半~2026年前半に国際宇宙ステーション(ISS)で実施予定の青少年向けの簡易宇宙実験(Asian Try Zero-G 2025)のテーマについて、Kibo-ABC*1 加盟国・地域のうち9か国・地域*2 で募集しました。今回は物理的な現象を視覚的に確認できる実験の募集が行われ、その結果、1176名から500件の応募がありました。うち、日本では小学生から大学生まで49名から17件の応募がありました。(表1)
各参加国・地域で一次選考を実施し、その後、参加国・地域全員による最終選考会により、11件のテーマが選定されました。(表2)
*1 Kibo-ABC(「きぼう」を利用したアジア・太平洋協力イニシアチブ)は、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)に設置されたイニシアチブで、アジア・太平洋地域における「きぼう」利用の推進と、その価値を共有することを目的としており、14か国・地域から20の機関が加盟しています。
*2 参加国・地域(アルファベット順): オーストラリア、バングラデシュ、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、UAE
表1 Kibo-ABCメンバー国・地域からの提案数
国・地域
提案数
提案者数
オーストラリア
6
8
バングラデシュ
9
21
日本
17
49
マレーシア
46
101
フィリピン
89
201
シンガポール
17
63
台湾
67
195
タイ
232
464
UAE
17
74
TOTAL
500
1176
表2 選定テーマ(国・地域名アルファベット順)
国・地域
テーマ名
1
オーストラリア
水とばねの実験
2
バングラデシュ
微小重力環境での銅線を使用した水の形状観察
3
日本
紙飛行機でも翼端渦が発生するのは、重力のせいなのか?
4
日本
無重力で紙飛行機は翼のバランスに関係なく飛行できるか?
5
マレーシア
角運動量保存則
6
フィリピン
2つのジャイロスコープ
7
シンガポール
重心が異なる物体を3軸方向に回転させたときの影響は?
8
台湾
踊るスリンキーで流体力学を観察
9
タイ
バネにおける単純調和運動の挙動
10
タイ
微小重力下における液体ブリッジの力学
11
UAE
微小重力下における調和運動と減衰効果の研究
一次選考について
選考は一次選考と最終選考の二段階に分けて行われました。一次選考では、各参加国・地域で共通の評価基準を用い、科学的意義・新規性、安全性、運用性、実現性などの観点で評価が行われ、上位3つのテーマが選定されました。その結果、9か国・地域から27件のテーマが選ばれました。日本国内での選定結果はこちらを御覧ください。
各参加国地域での一次選考
シンガポールでは開催組織であるSpace Facultyが3つの実験テーマを選定しました(写真1)。今回、応募件数がもっとも多かったタイでは、国立科学技術開発庁(NSTDA)がAsian Try Zero G 2025プログラムを運営し、NSTDA宇宙教育プログラムマネージャー、国立遺伝子工学・バイオテクノロジーセンター(BIOTEC)、国立金属・材料技術センター(MTEC)、国立ナノテクノロジーセンター(NANOTEC)の専門家を含む委員会によって審査されました。(写真2)。
また、台湾の一次選考では台湾国家宇宙センター(TASA)主催のプレゼン大会で参加者がそれぞれの提案について発表し、その上位グループが代表として選ばれました。(写真3)
写真1 シンガポールでの1次選考の様子(Image by Space Faculty)
写真2 タイでの1次選考の様子(Image by NSTDA)
写真3 台湾での1次選考の様子(台湾) (Image by TASA)
最終選考について
最終選考にあたり、Asian Try Zero-G 2023の簡易物理実験を軌道上で行った古川聡宇宙飛行士から、技術的実現性や実験における改良点などの視点からアドバイスを受けました。(写真4)
すべての参加機関による最終選考会(写真5)では、一次選考に通過した27テーマについて、上記アドバイスを参考として共通の評価基準を用いて評価し、最終的に11件のテーマを選定しました。
選定したテーマは、2025年度後半に実施される予定です。
写真4 古川飛行士からアドバイスを受けている様子
写真5 全参加機関が出席した最終選考会
たくさんのご応募をありがとうございました。
今回残念ながら選ばれなかった方も、次回のAsian Try Zero-G開催の際にも是非ご応募をお待ちしております。
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