トランプ米政権幹部による非公開のやり取りが流出したことで、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する攻撃計画を策定する様子が垣間見えた。明らかになったのは、欧州の同盟国に対する露骨な軽蔑だ。

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  このやり取りはバンス副大統領とヘグセス国防長官らによるメッセージ通信アプリでのグループチャットで、米誌アトランティックの編集長に接続リクエストが送られた。同誌が24日に一部を記事で明らかにした。これによると、バンス、ヘグセス両氏は米国によるフーシ派掃討の取り組みに欧州同盟国が「ただ乗り」していると考えている。

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米軍の攻撃が報じられた後、崩壊した建物(24日、イエメン・サヌア)

Photographer: Mohammed Huwais/AFP/Getty Images

  バンス氏を名乗るユーザーはフーシ派攻撃に懸念を表明し、「自分はただ、また欧州を救うことになるのが気に入らないだけだ」と説明。「サウジアラビアの石油施設に対するリスクを最小化するために事前にできることがあれば、それをやるべきだ」と主張した。

  これに対し、ヘグセス氏は「副大統領、欧州のただ乗りを嫌悪するあなたの気持ちはよく分かる。自分も完全に同じだ。全く情けない」と応じた。

  このやり取りは、トランプ政権幹部のグループチャットに誤って追加されたアトランティック誌のジェフリー・ゴールドバーグ編集長が受け取ったメッセージの一部だ。グループチャットでは、1年余りにわたり紅海を通過する船舶に危害を加えてきたフーシ派への攻撃計画が話し合われていた。

  フーシ派攻撃作戦はこのやり取りがあった後、すぐに実行に移された。

  欧州諸国の防衛費や対ウクライナ支援拠出が十分でないと非難するトランプ大統領に対し、欧州の不安は既に深まっていた。トランプ氏はまた、欧州連合(EU)数カ国の経済を揺るがすほどの大規模な関税を導入する意向も示している。

  バンス氏は2月のミュンヘン安全保障会議で演説し、極右をドイツが検閲していると批判。米国に対する欧州の疑念をいっそう強めた。ヘグセス氏も北大西洋条約機構(NATO)会合で、米国は「欧州の安全保障を最優先する」ことはできないと発言し、さらに波紋を広げた。

  今回のやり取りはこうした公の発言からさらに踏み込んだ内容だ。ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)はフーシ派攻撃に関連する費用を集計し、トランプ氏の要請によって「欧州の連中に請求する」とチャットで述べた。

President Donald Trump, Michael Waltz, JD Vance, and Pete Hegseth, from left, at White House on March 13.

左からトランプ大統領、ウォルツ大統領補佐官、バンス副大統領、ヘグセス国防長官(13日、ホワイトハウス)

Photographer: Andrew Harnik/Getty Images

  アトランティック誌の記事について、スウェーデンのビルト元首相は「驚くべき話だ」とX(旧ツイッター)に投稿。「深い反欧州感情に突き動かされているバンス副大統領の姿が、再び明らかになった」とした。

  国家安全保障会議(NSC)会議のヒューズ報道官は欧州との関係について、コメントの要請には応じなかった。同報道官は前日、チャットメッセージのやり取りは「本物であると思われる」と声明で発表した。

  トランプ政権から敵対的な発言が続いているため、欧州の同盟国は米国と機密情報を共有することの影響を考え直すかもしれない。

  「情報の受け手が最善の手法を用いていないことが示唆されるのは、それが何であっても懸念すべき事態だ」と元情報機関幹部で現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)バイスプレジデントのエミリー・ハーディング氏は述べた。

原題:Trump Cabinet Messaging Breach Confirms Fears of European Allies(抜粋)

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