一時は活況を呈したウラン関連の金融商品が、2025年の始まりとともに暴落モードに転じている。世界有数の核燃料生産国であるカナダが、米国と貿易を巡り緊張が高っていることが大きな要因だ。最近では、ロシアによるウクライナ侵攻の停戦に向けた話し合いも行われており、ロシア産ウランに対する制裁が緩和され、供給量が増加するとの見通しも強まっている。

  ウランの価格は24年初頭から3分の1以上、今年だけでも約11%も急落している。 主に採掘株を追跡している29億ドル(約4360億円)規模のグローバルXウラニウムETF(上場投資信託)は、今年約5%下落した。 カナダ・サスカチュワン州を拠点とする北米最大のウラン採掘企業カメコは、5年間の上昇相場を経て、11%下落に転じている。

  ウランが活況を呈したのは、わずか1年あまり前、約10年の低迷期が続いた後のことだった。原子炉の再稼働に動く国が増える中、人工知能(AI)やデータセンターへの投資成長に伴い、電力需要が急増すると見込まれた。2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで、供給のゆとりはさらになくなった。

Uranium Slumping Again | Commodity retreats after hitting multi-year high in 2024

 

 

  だが、ここ数週間で逆風が強まっている。ウクライナの停戦を巡り、何が起こるのかが明確になるまで、投資家はここ数日の株式の安定が続くとは考えない。天然資源関連のETFを提供するスプロット・アセット・マネジメントのジョン・チャンパリア最高経営責任者(CEO)によると、米国のトランプ大統領の関税に対する不透明感から、公益事業会社は金属の長期購入契約の締結を延期している。

  チャンパリア氏は「市場は煙に包まれており、何が何だか誰もわからない」と話す。

  米国の関税が予想より的を絞ったものになる可能性が示唆された24日は、株式市場全体が上昇する中、ウラン株も上昇し、少なくとも一時的には、経済見通しに対するムードが明るくなった。

Uranium Stocks Underperforming in 2025

 

 

  このところ、ウラン生産者の株価を押し下げているもう一つの要因は中国だ。同国で、企業がより少ないエネルギーで済むAIモデルを生み出していることが示唆されたことで、原子力発電の推進が弱まる可能性がある。1月には、中国のAIスタートアップDeepSeek(ディープシーク)のモデルが登場したことで、エネルギー株が売り込まれた。アリババグループ創業者のジャック・マー氏が支援するフィンテック企業アント・グループが、コストの低い中国製半導体を使用した独自のAIモデルを開発したとの報道もある。

  未来アセット・ファイナンシャル・グループのETF部門グローバルXのリサーチアナリスト、ブルック・サックレイ氏は「今後、さらに多くのディープシークが登場し、電力需要の見通しを大きく変える」と述べた。

  スプロットのチャンパリア氏は、こうした要因をすべて合わせた結果、「誰もが様子見モードだ」と指摘した。

 

原題:Boom in Uranium Stocks Fizzles as Ukraine Ceasefire Talks Build(抜粋)

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