トランプ氏、輸入自動車に25%関税へ:識者はこうみる

 トランプ米大統領は3月26日、輸入自動車に対して最大25%の関税を課す計画を発表した。4月2日に発効する。市場関係者の見方は。25日、ホワイトハウスで撮影(2025年 ロイター/Evelyn Hockstein)

[27日 ロイター] – トランプ米大統領は26日、輸入自動車に対して最大25%の関税を課す計画を発表した。4月2日に発効する。

トランプ氏は大統領執務室でのイベントで、「米国製以外の全ての自動車に25%の関税を課す。まずは2.5%からスタートし、25%に引き上げる」と語った。

市場関係者に見方を聞いた。

◎楽観の見方後退、経済影響確認までレンジ継続

<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>

自動車関税は延期されるとの事前にあった期待感が剥落する分、株価は下押しされるだろうが、サプライズではない。為替の反応は限られた。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠した自動車部品は当面免除されるとの説明があったことも、下値を支えているだろう。

一律関税なら米自動車メーカーとの競争では不利になるものの、欧州や中国、韓国メーカーとの競争環境に変化はないとみることもできる。日本車メーカーは現地生産が進んでいるため、25%の関税がフルで重しになるわけではない。

米国で輸入車が買われなくなってくるかどうかが焦点となり、その傾向がはっきりするまでには時間がかかる。半導体や医薬品への関税も取り沙汰されており、警戒感はくすぶる。

トランプ氏によるディールの一環の可能性もある。自動車関税にしても、今後どのように変化するかは読みにくい。実体経済への影響度合いを見極めるまで、株価の下押しは限られそうな一方、上値も買いにくい。引き続き、トランプ氏の政策に関連したニュースに一喜一憂せざるを得ない。日経平均は当面、3万6000円─3万8000円を中心としたレンジが継続するのではないか。

◎円金利の低下材料だが下げ余地は限定的

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 大塚崇広氏>

トランプ関税については間違いなく輸出には逆風となり、景気に対しては悪材料ということから、金利低下要因だ。

また関税の話を受けてけさの日本株も下落して始まっており、これも債券にとっては買い材料、つまり金利低下の要因である。

一方、国内では賃上げの動きも広がり経済はしっかりしていることから、現時点では日銀の利上げに「黄色信号」がともった、とまでは言えないだろう。

日銀の利上げ継続シナリオが崩れない限り、円金利の低下余地は大きくないとみている。

◎株価が為替を左右、長期的なドル買い圧力も

<三井住友銀行 チーフ為替ストラテジスト 鈴木浩史氏>

25%の自動車関税はある程度市場に織り込まれていたため、最初の反応はそれほど大きなものにならなかった。一方、株式市場では自動車関連が売られており、日本経済にとっては厳しいものとなる。米国も含めて株価が下落すれば、ドル/円には円高圧力がかかることになる。為替は今後、株式市場の動向に左右されるだろう。

一方、日本経済が下振れれば、日銀の利上げ継続の判断で様子見が長引く可能性もある。関税が賦課され、日本経済にどのような影響があるのかは2─3カ月みてみないとわからない。5―6月の追加利上げが困難になる可能性も出てくるため、円が売られやすくなるだろう。

トランプ氏は米国内で生産すれば関税がかからないと表明しており、製造業の米国回帰を目指してサプライチェーンの再構築を促すもの。日本企業も対応を考えざるを得ない。ドルに資金が集まる話で、長期的な目線ではドル買い圧力となる面もある。

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