『ファイナルファンタジーX』『スーパーマリオサンシャイン』『キングダム ハーツ』『ソニックアドベンチャー』。どれも2000年前後に発売された作品で、いずれも南国めいた海の描写が存在する。この時期の多くのゲームに「トロピカルなビーチ」がよく出てくるとして、その理由を考察する議論がReddit上で活発になっている。

今回議論の発端となった投稿では「2000年台初頭にリリースされたゲーム」について触れていたが、議論は「2000年前後にリリースされたゲーム」まで拡大している。また、同様の議論は過去にも幾度かおこなわれたことがある様子ながら、今回はよりいっそうの盛り上がりを見せているようだ。ユーザーがそれぞれの推察や意見を述べている。

今回ユーザーよりもっとも同意を集めている意見は「新世代ゲーム機による水の表現力の向上」説である。たとえば2000年にはPlayStation 2がリリース。翌年には同機向けにはシリーズ初リリースとなる『ファイナルファンタジーX』が発売されている。オープニングムービーのブリッツボール(作中に登場する水球のようなスポーツ)の試合に始まり、鬱屈とした水中遺跡を経て、開放的な南国風のビサイド島の海岸に流れ着くまで、多くの場面で水のある風景が選ばれている。また、同機向けに2002年リリースされた『キングダム ハーツ』の主人公ソラの故郷デスティニーアイランドも、南国風の土地である。

そして2001年にはニンテンドー ゲームキューブが発売。同機向けに翌年リリースされた『スーパーマリオサンシャイン』は南国のリゾート地「ドルピック島」が舞台となっており、島の各地のラクガキを消すために「ポンプ」で水を発射するなど、水の表現が多彩だ。1998年にはドリームキャストが発売。やや時を遡るものの前述の両コンソールと同じく、いわゆる「第6世代機」に分類される。同機向けにリリースされた『ソニックアドベンチャー』の序盤はエメラルドコーストという美しい海岸のエリアとなっている。「性能強化による表現力の向上」という観点で見るならば、過去のゲーム機に比べて向上したグラフィックの表現を印象づけるために、序盤に海を登場させるのはうってつけの方法であろう。

逆に、ビーチを登場させるのは「技術的な制約が理由」だったとする意見もある。砂浜には植物が育ちにくいため、凹凸の少ないハイトマップと砂のテクスチャが中心となる。市街地や森などと比べれば、より少ない容量や描画負荷でリアリティのある風景を作れるというわけだ。また、海はマップの開放感を保ちつつ、それ以上先には進めない「進入禁止エリアの表現」としても扱いやすそうだ。

ほかにも「ちょうど2000年前後の流行だった説」のようにゲーム外の世相に目を向けた考え方や、「単にビーチが魅力的だから流行した説」のようなゲーム業界内の流行の伝播に過ぎないとする意見もある。中には「日本が島国だったから説」や「開発者がバケーションに行きたい気持ちを表現した説」のようなジョークも見られるが、多くの意見が活発に交わされているようだ。

今回の議論は、ゲームによって個別に異なる事情を抱えている可能性があり、確たる答えが存在するわけではないだろう。とはいえ同じ時代という切り口で複数のゲームを見比べてみたり、ビーチというロケーションに着目して違った時代の作品を比較してみたりするのも面白いかもしれない。筆者は今回の議論を受け、久しぶりに『ゼルダの伝説 夢をみる島』の「コホリント島」にでも出かけようと思っている。読者諸賢も、印象に残っているビーチに再訪してみてはいかがだろうか。

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