ロシアとウクライナの停戦交渉が佳境を迎えている。早期の停戦実現には、ウクライナとともにロシアの「論理」も理解する必要がある。
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ロシアのウクライナ侵攻を巡る停戦交渉で、最近最も注目したのはルビオ米国務長官の発言だ。「これは核大国間の代理戦争だ。ウクライナを支援する米国とロシアの代理戦争だ。これを終わらせる必要がある」と述べた(3月5日の米FOXニュースでのインタビュー)。
「代理戦争」の視点は、ロシアが断固として主張してきた歴史観だ。侵攻から3年経過し、米政府内でもロシアを「侵略者」として捉えるのではなく、「欧米対ロシア」という構図で解釈されてきたことをうかがわせた。
3回目の「襲来」
ロシアの歴史観とは何か。一言でいえば「脅威は西欧から来る」という認識だ。ロシアにとって今回が「3回目」に当たる。
フランス皇帝・ナポレオンが率いる大軍は1812年、ロシアのモスクワに侵攻したが、ロシアは「冬将軍」を活用し、モスクワを全焼させて退却させた。ロシアにとっては「祖国戦争」とされる。
2回目は第二次世界大戦だ。ヒトラー率いるナチスドイツは1941年、独ソ不可侵条約を破って旧ソ連に侵攻した。ソ連は45年にナチスドイツを破ったが、犠牲者は2700万人にも上った。「大祖国戦争」としてロシア国民の記憶に残る。ナポレオン軍もナチスドイツ軍も同盟諸国、ないしは被占領諸国の各国軍が含まれ、実質上「欧州連合軍」だった。
今回はロシアが侵攻した格好だが、「3回目」の闘いの根底には、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大がある。NATOの加盟国は当初12カ国だったが、ロシアのエリツィン大統領時代にポーランド、ハンガリー、チェコが加わり、00年のプーチン政権発足以降も東欧諸国の加盟が相次いだ。
プーチン大統領は当初、NATO拡大を事実上黙認してきた。しかし国境を接するウ…
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週刊エコノミスト
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