アジアの為替トレーダーは6日のアジア通貨急落からかろうじて回復したばかりだが、すでに次のマクロ面のリスクに備えている。
今週は米金融当局が7日に金融政策を発表するほか、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会が8日に会議を終える予定。そのため、アジア全域のトレーディングデスクはさらなる損失の可能性に身構えている。
米金融当局が利下げペースの鈍化を示唆したり、中国当局の発表が投資家を失望させたりした場合、アジア通貨は下押し圧力を受ける可能性が高い。
米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利を受けて、円が対ドルで155円という心理的水準に向かい、オンショア人民元が16年ぶりの安値に接近したことで、アジア通貨の安定性が再び話題になっている。
一部のストラテジストは、米国が貿易相手国に新たな関税を課せば、アジア通貨の切り下げ競争が引き起こされる可能性があると警告している。
みずほ証券の大森翔央輝チーフデスクストラテジストは「今週はアジアの為替トレーダーにとって休む暇がない」と指摘。「トランプ氏の勝利でドル高はすでに加速しており、米連邦準備制度や中国の全人代でサプライズがあれば、投資家は介入リスクに警戒する必要がある」と述べた。
まずは米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。トレーダーらは当局者の発言を分析して今後の利下げペースを探ることになる。米金融当局は7日に政策金利を0.25ポイント引き下げると予想されている。9月に発表された金利見通しの中央値では年内にさらに0.25ポイントの利下げが、2025年には合計1ポイントの追加利下げが見込まれている。
この点に関するいかなるサプライズもドル、ひいてはアジア通貨の混乱につながり、当局が再び介入に踏み切る可能性もある。ブルームバーグドル・スポット指数は前日の取引で2年強ぶりの大幅高を記録。その後、7日は下げに転じた。
韓国当局は市場のボラティリティーが過度に高まった場合には緊急時対応策を実施すると発表している。また、インド中銀がルピー支援に向け介入した兆しがあるほか、インドネシア中銀は6日、市場の変動を緩和する用意があると表明した。
中国人民銀行(中銀)は7日、人民元の対ドル中心レートを約1年ぶりの水準に引き下げたが、当局が人民元の急落を容認する可能性は低いとの見方が依然として根強い。
ING銀の大中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は「人民銀は過度な人民元安を防ぐために再び介入を強めるだろう」と述べた。
トランプ氏の勝利を受け、投資家がドル高を含むいわゆる「トランプトレード」を再燃させたことでドルは1年ぶりの高値を付けた。これを受け、メキシコ・ペソや韓国ウォンなどの通貨が数年ぶりの安値に沈んだ。
FOMCを無事に乗り切ったとしても、トレーダーは中国に対処しなければならない。全人代常務委は今週の会議後に追加の刺激策を発表するとみられている。
中国政府は経済支援に向け、9月下旬の集中的な政策発表を含め一連の対策を打ち出しているが、アナリストは成長回復には消費を刺激する必要があると指摘している。
政策当局が8日に期待に応えられなければ、トレーダーらは米国の追加関税による打撃を織り込み、人民元が再び下落する可能性がある。
通貨切り下げリスク
一部のアナリストは、トランプ氏の返り咲きによってドル高が続けば、より悲惨な結果を招くと警告している。当局が輸出の競争力維持に向け競い合う中、アジアで通貨戦争が勃発する可能性があるという。
中国はトランプ氏の標的になっているため、米国の関税リスクが高まれば、空売り筋は人民元を標的にする可能性がある。また、韓国ウォンが1ドル=1400ウォンという重要な節目を突破し、インドネシア・ルピアとフィリピン・ペソが数カ月ぶりの安値を付けるなど、リスクはアジアの他の地域にも波及している。
ジェフリーズの外国為替グローバル責任者ブラッド・ベクテル氏は、中国には「ほとんど選択肢がない」とリポートで言及。中国は「トランプ氏の関税に反応して通貨を切り下げるだろうが、その切り下げ幅は自国への経済的影響に関する認識と一致するものになるだろう」とコメントした。
原題:Asian Currency Traders Brace for Risk Fed and China Disappoint(抜粋)
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