旅行先を決める際、SNSの情報を参考にする人は多い。しかし、実際に現地を訪れてみると、人気の観光スポットではオーバーツーリズムが深刻化し、観光客向けに整えられた場所ばかりが目につくことも少なくない。その結果、「どこへ行っても似たような景色ばかり」と感じられることもあるだろう。
こうした観光のあり方に対する反動として、地元文化への没入を求める旅行者が増加している。たとえば、2023年のBooking.comの調査では、旅行者の75%が「地元文化を反映した本物の体験」を求めていることが明らかになった。
そんな変化が起こる中で注目を集めているのが、「ハウススワップ(家交換)」という新しい旅行スタイルだ。SNS映えを意識した観光とは異なり、地元の暮らしに根ざした旅を楽しむことができる。
ハウススワップとは、家を交換して旅行するというシンプルな仕組みだ。従来のホテルや観光地中心の旅行とは異なり、地元の生活を体験し、SNSで見かけた景色だけでなく、リアルな文化や人々との触れ合えるところが利点である。
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ハウススワップは、2024年の春節シーズンに中国のSNS「レッドノート(小紅書)」で話題となり、一部の旅行者が個人的に始めたのをきっかけに広まった。現在では、「换房APP」「换房旅游」などのプラットフォームが出現。マッチングアプリのようにパートナーを探し、合意すれば保証金や署名を経て家を交換する。滞在後、問題がなければ保証金は返金される仕組みになっている。プラットフォームは身元確認や不動産証明書、顔認識を義務付けており、一部プラットフォームでは貸し借りする人がトラブルや損害補償などの保険に加入することも可能だ。
見知らぬ人とのハウススワップには、このように安全性の確保が不可欠だろう。信頼できるプラットフォームで事前にしっかりとコミュニケーションを取ることで、その不安が払拭されるのだ。
近年、観光地の「景色の商品化」に対する懐疑が広がっている。実際、ベネチアやバルセロナ、京都などの主要観光都市では、過剰な観光客の流入によるオーバーツーリズム問題が深刻化し、一部の地域で観光客の制限措置が取られるまでになった。
中国の若年層の間では、こうした「消費型の観光」に対する反動として、リアルな文化体験を重視する流れが強まっているのだ。SNS・レッドノート(小紅書)では、観光名所ではなく、地元の市場で買い物をしたり、現地の家庭で食事を共にしたりする「ディープトラベル(深度旅行)」に関する投稿が話題に。つまり、「どこに行くか」よりも「どう過ごすか」に重点を置く価値観が広がっている。
そんな背景も後押ししてか、ハウススワップは単なる宿泊手段ではなく、新しい旅行の価値観を象徴する存在となりつつある。「その土地に住むような体験」を可能にし、旅先の文化や日常をより深く理解する機会を提供する。また、オーバーツーリズムによる観光地の過密化を回避し、地域に分散した滞在を促すことで、持続可能な観光の一助にもなり得るのだ。
SNSのアルゴリズムに振り回されず、自分が心から興味を持つ旅先を選ぶ──そんな新しい旅の兆しとして、ハウススワップは今後ますます注目を集めていくだろう。
【参照サイト】This Spring Festival, Travelers Are Swiping Right — On Each Other’s Homes
【参照サイト】On a budget and seeking authentic experiences, Chinese travelers turn to house-swapping
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Edited by Megumi
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