韓国の憲法裁判所は4日、尹錫悦大統領に対する国会の弾劾訴追は妥当との判断を下した。尹氏は直ちに罷免され、数カ月にわたる政治空白の終結に向け大統領選が早期に行われる。

  憲法裁の裁判官による全員一致の判断を受け、尹氏は即時失職。60日以内に大統領選が実施される。次期大統領に誰がふさわしいかに関する世論調査では、最大野党・共に民主党の李在明代表がリードしている。

  SBSテレビによれば、4月8日に国務会議を開き、大統領職を代行している韓悳洙首相が大統領選の日程を発表する見込みだ。投票日は6月3日となる可能性が高いという。

Martial Law Declared In South Korea

大統領府で非常戒厳を宣布する尹錫悦氏(2024年12月3日)

Source: South Korean Presidential Office

  韓国近代史上最も政治的混乱の激しい時期に終止符が打たれる見込みだが、次のリーダーは、米トランプ政権の関税政策や挑発的な姿勢を強める北朝鮮への対応などの難題に直面する。

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  尹氏は昨年12月、1987年の民主化後では初めての非常戒厳を宣布したが、撤回を求める決議案が国会で可決されたことから、わずか数時間で解除した。その後、国会が尹氏に対する弾劾訴追案を可決し、尹氏は職務停止となった。

South Korea's Opposition Leader Lee Jae-myung News Conference

李在明氏

Photographer: SeongJoon Cho/Bloomberg

  尹氏の政治的な賭けは、韓国をここ数十年間で最悪の憲法危機に陥れた。トランプ政権の関税への対応が急務であるにもかかわらず、輸出に大きく依存する韓国は政治の方向性が定まらない状況に陥っている。現在は韓首相が大統領職を代行している。

  尹氏は不正を否定しており、非常戒厳の宣布は野党・共に民主党が政権運営をまひさせるのを阻止することが目的だったとしている。弾劾裁判とは別に、尹氏は非常戒厳を巡る刑事裁判にも直面している。

  李在明氏は2022年の大統領選で尹氏に僅差で敗れたが、昨年4月の総選挙で共に民主党は議席を大きく伸ばし、次の大統領選に向け李氏への強い追い風となった。

  共に民主党は、富裕層や巨大企業グループへの増税を目指している。李氏は北朝鮮に対し、より融和的なアプローチを掲げている。トランプ大統領が、北朝鮮の最高指導者、金正恩氏との対話再開を目指せば、そうしたアプローチはトランプ氏の方針と合致するかもしれない。

  中国に対して強硬姿勢を取ることや日本との関係強化について、李氏はより慎重だ。そうした姿勢は、米国および地域同盟国との協調を難しくする可能性がある。

  大統領候補としては、李氏の他に金文洙雇用労働相や呉世勲・ソウル市長の名前が挙がっている。

  次の大統領選の勝者は、多くのリスクに直面する経済を引き継ぐことになる。世界の貿易相手国に対し相互関税を課すとしたトランプ大統領の前例のない決定は、米国の同盟国の中でも特に韓国に大きな打撃となる。

  韓国からの輸入に対し、4月9日から25%の関税が賦課される。既に自動車と鉄鋼、アルミニウムには高関税が適用されている。トランプ氏の方針は、サムスン電子や現代自動車など、グローバルなサプライチェーンに深く組み込まれている韓国企業にとって重大なリスクとなっている。

South Korea Court Rules on President Yoon's Impeachment

尹大統領罷免に反対のデモ参加者(4日)

Photographer: Woohae Cho/Bloomberg

原題:South Korea Court Ousts President Yoon, Triggering Election(抜粋)

(選挙日程に関する報道を追加して更新します)

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