中国人民銀行(中央銀行)が4月7日設定した人民元の対ドル基準値は、中国当局が米国などとの通商関係を短期的にどう考えているかを浮き彫りにした。画像は人民元紙幣と米中国旗。4日撮影のイメージ写真(2025年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)
[香港 7日 BREAKINGVIEWS] – 中国人民銀行(中央銀行)が7日設定した人民元の対ドル基準値は、中国当局が米国などとの通商関係を短期的にどう考えているかを浮き彫りにした。一方で、中国の長期的な戦略も急速に明確になりつつある。
人民銀行は7日、元の基準値を1ドル=7.1980元に設定。ロイターがまとめた市場予想では前営業日比1.8%の元安が見込まれていたが、実際には0.1%の元安にとどまった。
背景には、緊急な理由がない限り、急激な通貨変動を避けたいという人民銀行の意図がある。
中国政府は34%の対米報復関税を発表し、市場を動揺させたかもしれないが、米国の相互関税が発効するのは今月9日、中国の報復関税が発効するのは翌10日で、両国にはまだ交渉の時間が多少残されている。
ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオ氏は、中国が関税措置の緩和と引き換えに人民元を対ドルで上昇させる可能性があると指摘したが、これは実現しそうにない。中国当局はプラザ合意後の円高が日本経済の停滞を招く重要な要因になったと認識しているためだ。
また、中国は元の国際化に向け、長期的に安定した強い元を望んでいる。
米国はすでに20%の対中追加関税を課しているが、こうした事情もあり、人民元は対ドルで年初から0.2%の下落にとどまっている。
だが、相互関税が発動されれば、人民銀行は急激な元安や大規模な資本流出のリスクを回避するため、緩やかで制御された元安を容認するだろう。
また、中国政府は関税後の世界で機能する貿易相手国のネットワークを構築するため、アジア近隣諸国との交渉を目指しており、元安が近隣諸国に及ぼす影響を抑えたいと考えている。
人民元はこうした緩やかな下落で、現在の水準から13%前後値下がりする可能性があるが、人民元が2005年に管理フロート制に移行する前の対ドル固定レート(1ドル=8.2765元)には届かないだろう。
人民銀行は完全には元安を止められないが、元安ペースの抑制はおそらく可能で、政府が選択肢を検討する時間を十分に稼ぐことができるとみられる。
The line chart shows the yuan’s trading band in Trump’s second term.
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(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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