2022年に発見されて話題となった、初の「単独のブラックホール」候補について、天文学者がハッブル宇宙望遠鏡による新たな観測結果をふまえて、間違いなく単独の恒星質量ブラックホールであると結論づけました。
[2503.07820] OGLE-2011-BLG-0462: An Isolated Stellar-Mass Black Hole Confirmed Using New HST Astrometry and Updated Photometry
https://arxiv.org/abs/2503.07820
Yes, there really is a black hole on the loose in Sagittarius
https://www.sciencenews.org/article/lone-black-hole-sagittarius-hubble
これまでに見つかったブラックホールは、銀河の中心にある超大質量ブラックホールを除き、すべてが伴星を伴う連星でした。
2022年、大阪大学・カリフォルニア大学バークレー校・宇宙望遠鏡科学研究所・NASA・ワルシャワ大学などの共同研究グループが、「単独で存在するブラックホール」の候補となる天体を発見しました。
単独で存在するブラックホール候補を発見 – ResOU
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2022/20220610_4
当該天体は、研究に携わる大阪大学大学院理学研究科の住貴宏教授の研究グループ・Microlensing Observations in Astrophysics(MOA)が、2011年にマイクロレンズ事象「MOA-2011-BLG-191」として発見していました。同時に、チリの研究グループ・Optical Gravitational Lensing Experiment(OGLE)も「OGLE-2011-BLG-0462」として発見していたとのこと。
マイクロレンズ事象のうち、ブラックホールによるものは1%以下だとのことですが、MOAやOGLEの観測データやハッブル宇宙望遠鏡の観測データから、宇宙望遠鏡科学研究所のカイラシュ・サフ氏らのチームは、当該天体が約5153光年離れたところにある7.1太陽質量を持つブラックホールだと主張。
一方、カリフォルニア大学バークレー校のチームは、2280光年から6260光年離れたところにあって、1.6太陽質量から4.4太陽質量だと推定しました。死んだ星の残骸がブラックホールになるためには2.2太陽質量が必要だと考えられているため、カリフォルニア大学バークレー校の結論では、当該天体が中性子星である可能性が排除できないということになります。
今回、新しく発表されたのはサフ氏らのチームによるもの。新たに、2021年と2022年のハッブル宇宙望遠鏡の観測データと、2025年1月まで天の川銀河の観測に用いられてきた宇宙望遠鏡「ガイア」のデータが組み込まれていて、当該天体の質量はおよそ7太陽質量、誤差は0.8太陽質量なので、不確実性は以前の半分になったとのこと。
サフ氏は「今のところ、この天体が単独ブラックホールとしては唯一のものです」と語った上で、2027年に打ち上げられるナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡を用いてさらなる単独ブラックホールを発見したいという意向を示しています。
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