日本の道路では異彩を放つデザインのヒョンデINSTER。フロントフェイス上部のピクセルグラフィックはターンシグナル、ヘッドライトは円形のデイタイムランニングライトの中にLEDが組み込まれている

5ナンバーの小さくて広いBEV

 韓国のヒョンデは現在、KONAとIONIQ5の2種類の電気自動車(BEV)を販売していますが、4月10日から新たにINSTER(インスター)の販売を開始しました。

 このクルマの最大の魅力は“5ナンバーサイズ”のボディ寸法にあります。“5ナンバーサイズ”とは全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下と定められており、INSTERは全長3830mm、全幅1610mm、全高1615mmで、規定内にすっぽり収まっています。ボディが小さいと、自動的に室内も狭くなってしまうのではないかと想像されるかもしれません。しかしINSTERのもうひとつの魅力は、BEVならではのパッケージを最大限に活かした余裕あるキャビンスペースにあります。

乗車定員を4名と割り切ることで、どこに座っても同等の快適性が得られるようにしたという。後席は前後とリクライニングの調整が可能

 エンジン搭載車とBEVを比べると、エンジン搭載車にあってBEVにはないものがいくつかあって、排気系もそのひとつです。排気系とは、爆発を繰り返すエンジンから放出される排気ガスを触媒である程度まで浄化した後にリヤのマフラーから排出する構造の総称で、爆発をしないBEVにはこれらが必要ありません。そうなると、まずエンジンルームが小さくできるし、床下に排気管や触媒を通すスペースを確保しなくて済みます。

前席のバックレストはフォールディング機構が備わっているので、長尺物も積み込める

 全長が決まっている場合、エンジンルームが小さくできれば、その分を室内スペースに充てることができるし、排気管の代わりに床下バッテリーが置けるだけでなく、室内側のフロアを平らにすることもできます。こうしたBEVならではのパッケージの優位性が、INSTERの室内にはおおいに反映されているのです。

荷室容量は280リットルとされている(VDA法に基づく自社測定値)

 また、前後のオーバーハングを必要最低限まで短くし、真上から見るとタイヤがボディの4隅に配置されています。こうすることで、タイヤがエンジンルームや室内側に干渉することを可能な限り抑えると同時に、クルマの直進安定性の向上や横風に強いふんばりも実現しています。

 実際、試乗当日は強風が吹いていましたが、橫浜のベイブリッジでもステアリングが取られることなく、安定した走行を続けることができました。

 フロアが平らになりセンターコンソールを最小化したことにより、運転席と助手席のウォークスルーを実現。後席は前後方向にスライドが可能で、1番後ろまで下げると広大な足元スペースが現れます。

 Aピラーが最近のクルマにしては寝ていないのでフロントドアの開口部が広く、乗降性に優れているのもこのクルマの特徴のひとつと言えるでしょう。

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