JR東日本の2020年と2021年は悪夢のような状況でした。3兆円あった売上は1兆円以上消失し、その穴埋めのためやはり1兆円以上の借入れ。2021年12月末時点でも、前年より1800億円・1~2割ほどしか回復していません。

 JR東日本の失策は主に2つ。新型コロナウィルスの過小評価と、過剰な値下げ攻勢です。
 もちろん前者は誰にも予想はできなかったと思いますが、少なくとも2020年3月時点で異様な定期券販売量の減少・多数の払い戻しが発生していたはずです。窓口の釣り金が不足して急遽閉鎖したということもあったと記憶しています。明らかに異常事態です。そして4月は前年比24%、5月は29%と売上が激減し、ゴールデンウィークに至っては利用状況前年比 5%(マイナス95%)という悲惨な状況となりました。

 このような状況下で悪い判断が重なったのが、後者の過剰な値下げ攻勢です。コロナ禍がこれまでのJRの危機と大きく異なるのは、旅行需要があるのに行動が規制されたことであり、競合他社との値段競争などが原因ではありませんでした。安くしたところで利用は増えないですし、実際増えませんでした。
 それでも列車を利用する人というのは、そもそも情勢に関係なく旅行してしまう人か、仕事などやむを得ない事情で利用している人達だったはずです。これらの人達は、値段が高かろうが安かろうが利用したでしょうから、経営判断としては値上げか割引切符の休止などをするべきだったはずです。時間外労働が発生する臨時列車も極力減らすべきだったでしょう。

 しかし実際にはほとんど真逆でした。今でこそ履歴を見ると臨時列車・イベント中止などのお知らせしか残っていませんが、当時はまだ各支社ごとのホームページが運営されていて、コロカ禍でも何のそのな勢いでイベントや臨時列車のお知らせが続々と掲載されていました。むしろ中止のお知らせばかり現在のホームページに残っているのはそのためです。これらの支社のホームページは、2020年12月に突然一斉に閉鎖されてしまいました。
 割引切符についても、ご存知の通りえきねっとトクだ値の充実化やチケットレス特急券の拡充など値下げの拡充の方が多く、新幹線料金見直しなどの値上げに移ったのはほとんど2021年に入ってからだったように思います。
 列車本数についても一度は5月に大規模減便を計画するも、のちに撤回しています。この時の計画についても単価の高い特急列車などの減便が中心でしたから、そもそもの着眼点が間違っていたように思います。単価の高い特急列車等を残して単価の安い普通・快速列車を減便しなければ、意味が無かったのですから。

 こうして、2020年度はほとんど対応が裏目、後手に回ってしまい、過去最悪の5000億円以上の赤字を出してしまいました。前年の利益をも上回っていますから、この時点で2年分の営業活動が消失してしまったも同然なのです。
 2021年に入っても、動きは緩慢に感じました。3月ダイヤ改正でいくらかの合理化、早朝深夜の減便などは行われましたが、5000億円級の赤字に対応するものとしてはなおもボリュームが足りません。本格的な減便改正は、今回の3月改正でようやく実施となりますが、それでも果たして黒字化できるかは利用状況に頼るほかないように感じています。

 ここまで長々と説明してきたのは、果たしてこれが2020年と2021年度の賞与が合計で4ヶ月分も削減される理由として正しかったのか、ということです。
 従業員は経営者たる上司の指示に従わなければなりません。しかしその上司の経営判断は正しかったのか?その失敗のしわ寄せを、賞与削減という手の出しやすい経費削減で穴埋めしただけではないのでしょうか?
 もしこの2年間で、仕事が少なく楽になり、休みも増えて手取り収入が減っても納得がいくぐらいの変化があったならば私からは何も言うことはないのですが、しかしこれまでの状況を見ている限りそこまで大きな変化があったようには思えません。
 営業費はコロナ前と比べ、連結2808億円の削減となっていましたが、単体では1043億円。しかもその半分以上の555億円が人件費削減、すなわちボーナスカットによるものです。
 それでいて設備投資は増えていました。7000億円以上が有形及び無形固定資産の取得支出で使われており、赤字よりも大きな数字です。
 はたしてこの投資は利益に繋がっている、あるいはこれから繋げられるのでしょうか?この数字はリニア中央新幹線を建設しているJR東海よりも大きな数字となっていました。そうです、あれだけ批判を受けているリニアよりも大きな投資をJR東日本はしているのです。巨額の赤字にもかかわらず、です。
 私のチェックも甘いのかもしれませんが、そういった批判をしている労組の記事はたぶん見たことが無いように思います。

 話をまとめると、
・労働内容は大きく変わっていない、もしくは負担が増えているのに年収ベースでは賃下げになっていることはおかしい。賃金を下げるからには仕事負担、拘束時間を減らすべきである。
・売上の減少は外的要因だが、それに対する対応は本当に正しかったのか?需要減にもかかわらず値下げ攻勢を行ったのは、売上減少に拍車をかけたのではないか。
・政府の税制助成があるのに、全くそれを活用する動きを見せないのはなぜか(そもそも政府の取り組みは黒字企業を想定した内容であって、JR東日本のように赤字企業の場合は法人税がゼロで何も恩恵が無いはず。しかしなぜか実際には法人税が発生しているので、一応は使える手段であるはず。)
・労組のベースアップ要求では、賞与が前年より削減されれば年収ベースで賃下げになる恐れがあり、要求が弱い。
・社員の皆さんはこれらのことに気が付いているのか?

私から社員の皆さんにお伝えしたいのは、以上です。
JR東日本の社員の皆さんの待遇が、今より改善することを願います。

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