JR東日本は7日、開発中の列車を自動で運転する「自動列車運転装置」(ATO)の山手線での走行試験を報道公開した。JR東は今年度から10カ年の中期経営計画で、将来的な無人での列車運行の前段階として、運転士資格がない乗務員の添乗のみで列車を自動運行する「ドライバレス」実現を目指しており、走行試験で得た結果を元に、高度化ATOの開発を進める方針。
 実験は昨年末から始まり今回が3回目。山手線外回りを2周し、事前に組んだ走行速度パターンどおりにATOが作動するかや走行時の乗り心地などの確認が目的だった。
 行き先表示を「試運転」にした最新車両のE235系1編成(11両)は午前1時50分に大崎駅を出発。走行速度パターンは1周目は営業運転と同じ走行時間で次の駅への到着を目指し、2周目は営業運転より10秒早く到着するように設定された。

 実験担当者による「3、2、1」とのカウントに続き、運転席に座った運転士が発車前の指さし確認動作後に運転台のATO作動ボタンを押すと、列車は自動で発車。走行速度パターンに沿うようにATOは加速・減速を繰り返す。この間、運転士は通常の運転時に操作するレバーのような「主幹制御器」からは手を離したまま。駅が近づくと減速し始め、駅構内では徐行し、規定の停車位置で列車は止まった。

 JR東が開発を目指すATOは「駅に停車中に、運行状況に応じて自動で運行速度パターンを組み、列車の間隔調整ができる」という、他社で導入されているATOよりも高度なものだ。ただ、技術的に確立しても「ホームドアのほか、線路内に人や物など(列車にとっての)障害物が入らないような設備が必要」(得永諭一郎執行役員)で、最初の導入路線は検討中という。労働力人口の減少に伴う人材活用や安全運行確保の観点からも中期経営計画最終年度の2027年度までのドライバレス運行を実現させたい考えだ。

 国内鉄道会社でのATOによる無人運転は東京メトロなどの地下鉄のほか、新交通システムゆりかもめやつくばエクスプレスなど高架軌道の路線が多い。いずれのATOも事前入力した走行速度パターンに従って運転している。

 この日の試験走行では、運転士への支援システムとして、運転台から見ている光景の中に速度や加速・減速の指示などの情報が浮かんで見える「ヘッドアップディスプレー」の視認性テストも実施した。

WACOCA: People, Life, Style.