秋田県内の「世界に羽ばたく県産品」を紹介するシリーズ。今回は、市場のニーズを捉え、伝統と「新しさ」を融合させながらヨーロッパを中心とした海外への販路拡大を目指す、秋田県湯沢市の川連漆器の製造・販売企業を紹介する。

 朱色や黒の漆が輝きを放つ川連漆器。わんや盆などの実用品を中心に数百年もの間、多くの品が世に放たれている。

 1976年に国の伝統的工芸品に指定され、いまも職人技とその精神は受け継がれているが…。

 佐藤商事・佐藤慶太社長:
「『僕らが作ったからすごいでしょ』という時代は終わっていて、お客さんのニーズをしっかり把握して、お客さんが求めるものを提供していかなければ埋没していくと思う」

 農作業が落ち着いた冬場の内職として、古くから漆芸が盛んだった湯沢市川連地区。佐藤商事は、ここで「塗り」の工程を一貫して行っている唯一の会社だ。

 漆を塗って研いでを繰り返し約2カ月間、31ある工程を経て美しい商品に仕上げていく川連漆器の伝統を受け継いでいる。

 一方で、生産する商品とそれを送り出す市場は伝統にとらわれない。

 佐藤商事・佐藤慶太社長:
「人口の減少は僕らがどうこうできる部分でもないので、漆器がジャパンと言われている部分と、新たな市場という部分で、まずはヨーロッパに目を向けた」

 佐藤商事は、2017年のフランスでの展示商談会参加をきっかけに、ヨーロッパへの展開をスタートさせた。

 1月にもパリやロンドンで商品を売り込むなど、海外販路の開拓に力を注いでいる。

 佐藤商事・佐藤慶太社長:
「会社自体を次の世代に渡すのが僕の使命でもあると思う。ここで新たな市場を作って、売り上げを国内と海外を半々くらいにしておかないと、次の世代が漆器業界に入り込めないので、売り上げを変えていきながら、市場の確保が僕の最大の義務」

 朱色や黒の伝統色だけでなく、緑や白、ピンクを使うのはもはや当たり前。銀を混ぜた漆を塗って、高級感を醸し出す木製のトロフィー。底に漆を塗って、まるで万華鏡のような輝きを放つグラスなど、漆器の概念や可能性を広げるような商品の開発にも取り組んでいる。

 佐藤商事・佐藤慶太社長:
「『ここも塗っているの』とか『こんなものも塗れるの』とかの部分も僕らがやらないと、おわんとお箸とお盆がいつまでもという訳ではない。新たな市場というか、新たな用途にチャレンジしていくのが一つある。跳ねて跳ねて宇宙くらいいける感じで頑張っていきたい」

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